レントゲン・X線の発見と社会現象


 ドイツ人の物理学者、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン。

 彼の功績は、その名前にも表れているように世界――特に医療界にとてつもない恩恵をもたらした。

 そんな彼の功績は何かというと、X線の発見である。主に外科で使用されるレントゲン写真とは、彼の名前が由来となっているのは言うまでもない。

 X線の発見と、その効能は、視覚的に非常にわかりやすく、そしてレントゲン自身の名声もあって、民衆にもすんなりと受け入れられた……のだが、そのせいでこれまた妙な社会現象というか、商売が発生してしまったことはあまり知られていない。

 その理由は、X線が透視に使われるのでは? という民衆の不安が大きかったからだ。


 そんな民衆心理を汲んでか、まずニュージャージー州で、みょうちくりんな法律が制定された。

 それは『X線オペラグラスの使用禁止令』というものである。

 今の常識でいうと苦笑ものの法律だが、当時はこれが大真面目に協議されていたのである。いや、骨しか見えないだろうとか、放射線をまき散らす気か、などという野暮なツッコミをしてはいけない。

 さらに先に進んだもので、ロンドンでは、X線防止下着なんていうものが発売され、これが中々の盛況だったそうだ。

 これら一連の流れから鑑みるに、センセーショナルな発見というものは、まずは称賛から始まり、それから不安と恐れが訪れ、その不安と恐れを和らげるためのビジネスチャンスという流れが形成されやすいようだ。

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