非常にめんどくさい国賓――十九世紀のペルシャ王
十九世紀後半のペルシャ王といえば、とにかくめんどくさくて扱いづらい国賓として全世界にその名を轟かせていた。
では、どれほどめんどくさい相手かを証明する、ちょっとした一例を紹介しよう。
イギリスにて、とあるパーティの招待客として招かれたペルシャ王は、ロンドンに滞在した際に、とある侯爵夫人に好意を抱いてしまった。
しかし、相手は人妻。さらに言えば、それなりに名のある家の御妃。普通ならば、好意を抱くだけで終わるのが社交界の通例だが、ペルシャ王は違った。
そのおぞましい財力でもってして、侯爵夫人を公然と口説き始めたのだ。
札びらで顔をひっぱたくなんぞ当然のこと、それでダメなら宝石のプレゼント作戦に打って出る。
当然、侯爵夫人はペルシャ王のそのやり方に激怒し、旦那である侯爵と共にペルシャ王へ詰めよれば、ああ悪かったねと軽い言葉と共に、金銀財宝で示談にする。
舞踏会に招かれれば、舞踏会の主催者に悪びれることなく、こうのたまう。
「ここに集まっている女性は、みんな貴方の妻なのか?」
あまりの非常識ぶりに主催者が閉口していると、こう畳みかけてくる。
「貴方の妻ならば、みんな交換すべきだ。あまり良い趣味とは言えぬ。どうだ、よかったら私が斡旋してやろうか?」
これが冗談ならまだしも、ペルシャ王に冗談の文字など存在しない。純粋な好意で言ってくるのだ。
そんなこんなで各国の首脳や国王からは敬遠されていた。じゃあ、そんなめんどくさい奴を招待するなよと思うかもしれないが、ペルシャ王はなんだかんだで、多大なる金銭をばらまいてくれるので、各国から引く手あまただったそうだ。
なんというか、今も昔も、金銭の力は偉大だということの証明なのかもしれない。
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