知られざる天才・エラトステネス


 古代ギリシャには、様々な著名な学者が多いが、一般的な古代ギリシャの学者と言えば、哲学者を想像する方が多いのではなかろうか?

 しかし、古代ギリシャの学者の割合としては、確かに哲学者も多いが、その次に数学者が多いのだ。まあ、哲学者と数学者を兼任していた学者が多いのがその理由なのだが。

 そんな著名な学者たちがひしめく中で、驚異的な数学者が一人いる。


 彼の名は、エラトステネス。


 彼は天文学者も兼任していたのだが、それゆえに、当時としては途方もない仮定を思いついた人物である。

 その仮定とは、『地球は丸い』というものだ。


 一五二二年・九月六日にて、セビリアにマゼランが世界一周を終えて帰港した。彼の冒険は、地球球体説の証明をほぼ確信的なものにした。

 だが、エラトステネスはマゼランの世界一周のおよそ一七〇〇年前に、地球は丸いのだと考えていたのだ。

 この事実だけでも驚嘆に値することだが、エラトステネスが凄まじいのは、それを思いついた過程とそれを証明しようとした方法にある。


 まず彼がしたことは、人を雇って、アレキサンドリアとシェネ(アスワン)の間を一定の歩幅で歩かせ、その距離を測った。

 そして、アレキサンドリア・シェネの両都市での夏至の日の太陽の位置の差から、地軸の傾きを計算し、その数字は約七度であるとした。

 そこからエラトステネスは、なんと地球の円周まで計算し、その数字を約四万五千キロメートルであると算出してみせたのである。


 ちなみに、実際の地球の円周は、およそ四万キロメートル。エラトステネスの計算の誤差は、およそ十五パーセント。

 近代的な装置や計測器を使用せずに、ここまで正確に計算することが出来たエラトステネスの叡智には、最早驚嘆を通り越して、畏怖心さえ覚える今日この頃である。

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