紫式部とその仲間たち


 世界で最も古い長編小説は何か?

 それはズバリ、『源氏物語』である。


 ではその『源氏物語』を執筆した作者は誰か?

 それは女流作家・紫式部(九七八~一〇二六)である。


 紫式部の生きた時代は、世にいう平安時代。紫式部はその『源氏物語』の完成度や歴史的価値もそうだが、やはり女流作家ということで現代の人々に高名を知らしている部分が大きいのではなかろうか。

 平安時代――つまり、昔の日本の男尊女卑の封建社会の真っ盛りに、女性の作家がいたのだという驚きによって紫式部は評価されている側面もあるのではなかろうか。


 だが、ここでちょっと待ってほしい。

 紫式部が残したものは『源氏物語』だけではないのだ。


 じゃあ何を残しているのかと言うと、作家というだけあって、紫式部はちょっとした日記も残しているのだ。

 その日記の中で、紫式部はあることを言っている。


 それは、“自分以外にも多数の女流作家がおり、さらにその女流作家たちも優れた作品を発表している”ということなのだ。

 なぜこの事実があまり知られていないかというと、惜しむべきことだが、その当時の女流作家たちの作品が現代に残っていないということが理由として最たるものだろう。

 同じ作家として、当時の女流作家がどのような作品を執筆していたか、実に興味がつきない話なのだが……残念である。


 ちなみに一つ注釈しておくが、日本において女性の地位が低くなっていってしまったのは、実は平安時代以降――十一世紀以降のことなのだ。

 じゃあなぜそうなってしまったかというと、それはズバリ“仏教の影響”だ。


 さらにもう一つ注釈しておくと、平安時代というと源平合戦のことを想像する人が多いだろうが、平安時代というのは実に四百年も続いた長い時代なのだ。

 源平合戦というのは、その四百年のうちの五年間――一一八〇年の以仁王の反乱から一一八五年の壇ノ浦の戦いまでの五年間の源氏と平氏の争いのことを一般的に指すのである。

 このように、意外と普段抱いているイメージと史実の齟齬そごが大きいことがあったりするので、自分の知っていることを今一度調べなおしてみると、面白い発見があるものだと筆者はよく実感する日々を送っている。それと同時に、勉強不足も痛感しているということでもあるのだが……。

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