Part4:ドンクス区域
オセロ。別名リバーシ。
覚えるのに1分、極めるのは一生。
それが、このゲームのキャッチフレーズだ。
2人のプレイヤーが黒と白の石を交互に打つ。
この時、相手の石を挟むように打ち、挟まれた石はひっくり返って自分の石になる。
8×8のマスを取り合い、最後に自分の石が多い方が勝ち。
実にシンプルなルールだ。
オセロが日本で生まれたというのはよく知られていると思う。
製薬会社の営業が、入院患者の暇つぶしのために、囲碁や将棋よりも簡単に出来るものとして考案したもの、と言われてる。
オセロという名称は、シェイクスピアの戯曲『オセロ』から取られている。
敵味方が寝返りまくる物語になぞらえた、とか。
より詳しい話は、現代日本人ならネットで検索すればいくらでも情報が出るから自力で調べてくれ。
今の僕はネットが封印された非力な日本男子。
情報の海が常に遮断された状態で、自身のわずかな記憶だけを頼りに戦っているのだから。
◆◆◆◆◆
この世界において、商売は貴族様の許可を受けて初めて始めることが出来る。
当然、領主との繋がりが強い商会ほど、大きな力を持つ傾向がある。
ドンクス商会。
ソニックス領で一番大きな商会、というよりほぼ一強と言っていいようだ。
総合商社というべきか、扱っているものは幅広い。
食品、衣服、日用品、書籍、武器や防具、などなど。
鍛冶ギルド、服飾ギルドなどとも連携していて、流通だけでなく新商品の開発にも積極的に関わっているとか。
「で、この区画まるごとドンクス商会のマーケットってわけですか」
「市場と商店街、丸ごと牛耳ってる感じ?」
「むしろショッピングモールに近いと思う。雑多ぶりは地球のドンキと張れる」
「すげーな…八百屋と果物屋、武器・防具屋に服屋…この辺の店が全部ドンクスの傘下ってわけだ」
「宿酒場まである~。手ぇ広いねぇ~」
丘の上にある領主館から馬車に乗って街の中心へ。
広場を起点にしていくつもの通り道、そこに多種多様な店がずらりと並んでいるのだ。
これらすべてが、ドンクス商会が手掛けている店だという。
人々はみんな、この辺りのことをドンクス区域と呼んでいるとか。
ソニックス領に滞在する日本組は、異世界生活5日目にして初めて街に出ることになった。
これまで出掛ける機会が無かったのは、僕らがこの世界について知らなすぎるからだ。
通貨の価値も分からないんじゃ買い物なんて出来ないし。
さらにいえば、この世界には人々を襲うモンスターという存在がある。
さすがに街中で現れることはまずないが、これらに対抗出来る傭兵や冒険者といった人々が、普通に街を歩いているのだ。
総じて荒くれ者も多いので、もしもそんな人達とうっかりトラブルを起こしてしまったら、戦闘力がほぼ皆無の僕らでは太刀打ちできない。
特に女性陣は、絶対に一人で街へ出ないようにとマリオン様に釘を刺されたのだ。
しかし、この世界の文化についてある程度は教えてもらったとはいえ、やはり街の様子は直に知りたい。
僕にいたっては、遊戯盤を流行らせるにはどうしたらいいかと、マリオン様に相談されたばかりだ。
それに対しての僕の答えは、人々の生活を知らないままでは答えようがない、だ。
ゲームというのは遊ぶ人がいなけりゃ始まらない。
ゲームに限った話じゃないが、娯楽というのは人々の生活に根付いているものだ。
例えば、日々の食にも困るほど貧窮してるような人にゲームで遊べと言っても無理だろう。
そんな中で、マリオン様達が街へ出かける用事が出来た。
周が見つけた商会の収支の疑惑についてカチコミ、もとい事情説明をしてもらいにドンクス区域に出掛けることになったのだ。
領主代行が直々に出向くというので、護衛を引き連れることも不自然ではない。
今回、僕ら5人はそれに便乗する形で馬車に乗せてもらったのだ。
一応の名目は、異国からの客人に領内を案内する、である。
従士の何人かを僕たちの護衛につけてもらったので、大手を振って街を探索できる。
本当に破格の待遇である。
ちなみに、僕たちの手元にはこの国の通貨であるブラム銀貨が10枚ずつ。
各人のお小遣いが10000ブラムである。
先ほどちらっと見たリンゴのような果物が1個5ブラウであったことを考えると、小遣いとしては少しばかり大金。
このお金、ソニックス家が融通してくれたもの…ではない。
街に出るにあたってこの世界のお金がないことに気付いたものの、ただでさえ厄介になっているソニックス家からさらにお金を借りるのはさすがに気が引けた。
そこへ藍がアイディアを出してくれたのだ。
「普通、異国に来たら貨幣を交換する。エクスチェーンジ」
「…なるほど。日本円を両替というか、鑑定してもらって売ってみるってわけか」
異世界からの来訪者が持つコイン。
確かに、日本円はこの世界では超貴重な硬貨。
遠い異国の硬貨だと言って鑑定してもらえば、資金にはなるかもしれない。
「カプチー君。周に日本のお金は見せてもらった?紙幣じゃなくて、コインの方」
「ええ。100円玉と500円玉、でしたか。綺麗な硬貨だと驚いたものです」
「100円は銅とニッケルで出来た白銅。500円玉は亜鉛も加えたニッケル黄銅だったかな。
多分だけど、この世界ではまだ確立されてない技術で出来ていると思う」
「銀じゃないんだね~、100円って」
「僕も以前はそう思ってたよ。昔の100円玉は確かに銀貨だったけど。
ともかく、どうだろう、行けそうかな?」
「うーん…ボクは鑑定士ではないので正確な値段は言えません。
ただ、冒険者の方々がダンジョンや異国から珍しいコインを持って帰ってくることはあるので、その手の鑑定が出来る場所は確かに存在します。
知り合いに鑑定士がいますので紹介しましょうか?」
「いるんだ、そういうの。…やってみる?」
「あまり大っぴらにするのもあれだし、とりあえず100円玉辺りで試してみるか?」
軽く打ち合わせの後、周とカプチー君が鑑定士の元を訪ねてみた。
遠い異国から訪れた客人が、硬貨を交換してほしいという名目で訪れ、硬貨の価値を鑑定してもらったのだ。
知り合いだというので、交渉は基本的にカプチー君に主導してもらう。
その結果…
「…まさか100円玉1枚が金貨に化けるとは。カプチー君、交渉ありがとうな」
「いえいえ。鑑定士の方も初めて見るコインで興奮していましたね」
金貨1枚、すなわち100000ブラム。ぼったくりじゃないかと、ちょっと不安になる。
支払いは1000ブラム銀貨100枚にしてもらい、一人10枚ずつ受け取った。
残る50枚は日本組共通の資金ということにして、周が別口で預かっている。
今後何が必要になるか分からないから貯金するのもいいし、これまでの恩の分をソニックス家に納めるのもありだろう。
その辺は館に戻ってから要相談。
ともあれ、資金が出来たのは幸い。
ある程度は自由な買い物が出来そうだ。
「では、私たちはドンクス商会の本社に向かいます。シュウ殿にはお手数をお掛けしますが…」
「俺も気になりますし付き合いますよ。ただ、後で俺も街探索する時間をいただければと」
「もちろんです。終わったらリオン殿達と合流しましょうか」
「了解です。理音、このボードゲーム借りてくぜ?」
「ええ。ただ、それは大事なものなので、駒一つたりとも無くさないようにお願いします」
「分かってるよ」
マリオン様は商会のトップへ直談判に行く。そこへ、周とクラウディスさんが付いていくことになっている。
側近のクラウディスさんはともかくとして、周もまた事情説明を聞きたいとのことで同行することになった。
商会のトップに顔を売っておいた方がいいという打算もあるのかもしれない。
日本組の中で周が一人だけ別行動になってしまうが、執事長のクラウディスさんは護衛としても一流のようなので、その辺は信用するしかない。
ついでに周は、僕のボードゲームセットをはじめ、仲間たちから色々と借りていった。
せっかくトップと会うのだから、チャンスがあれば売り込んでみようと、周の鞄にはいくつか地球産の道具が入っている。
コミュ障の僕が行くとまた話を大げさにしたうえでややこしいことを起こしかねないので、ここは彼に任せておこう。
交渉事は専門家に任せた。
「フォックス、カプチー、キルビー。皆さんのことを頼みましたよ」
「お任せください!ばっちり案内してみせますよォ!」
残る僕らの元には3人の部下をつけてもらった。
フォックスさんは名前通り狐の
二足歩行している、顔も狐、尻尾も狐の大男だ。
彼を初めて見たときの藍の感想が『モフモフマッチョ』である。
少々暑苦しい男であるが、従士の中では一番戦闘で頼れる男であるらしい。
可愛い系半猫獣人の執事カプチー君も、従士としての訓練を積んでいる。
若手のホープであることを期待して護衛に抜擢された。
街にもちょくちょく顔出しているので、案内役として最適だという。
最後の一人が、妖精メイドのキルビーだ。
普段は家事に従事する彼女だが、魔法使いであり従士としての訓練もしてるので護衛に選ばれた。
女性3人に配慮してもらったのもあるだろう。
「さて、どうしますか? 僕は街を一通り周れればいいのですが」
「ウチらは服が欲しいかな。さすがに同じ服を着まわすのも限界だし」
「ずっと服を借りるわけにもいかないしね~。ちょっと胸がきついし」
「…私は着られればなんでもいいんだけど」
「ダメだよ~、藍ちゃん!今日はちゃんとコーディネートするから!」
「理音も、ちゃんとした服を買ってよね?」
「安物でいいんですけどねぇ、僕も」
異世界生活で困ったことその2、それが衣服である。
地球での衣服は転移時点で着ていたものだけ。泊まり用の着替えを持っていた者もいたが、それでも1日分しかなかった。
さすがに同じ服をずっと着るのは衛生面で問題があるので、ソニックス家の人々に服を借りたのだが、これは特に女性陣が困ることになった。
自分たちの体型にあう服が無かったのである。
この世界では様々な種族が存在しており、体型から尻尾の有無まで、様々なニーズに合わせて服を用意しなくてはならない。
そのため服は一人一人に合わせて作られたものが普通。
人間では着られない服というものが当たり前のように存在する。
まさか獣人用の、尻に穴が開いた服を着て歩くわけにもいくまい。
やむなくマリオン様の母上の服をお借りすることになったのだが、やはり執事長のクラウディスさんがいい顔をしなかった。
僕ら男性陣も従士の方に服を借りているが、やはりサイズが合わない。
早々に衣服を揃える必要があった。
この世界では服飾店でのオーダーメイドが原則。
とはいえ、それでは作成に時間が掛かるもの。
急に服が入用になるケースもあるので、各種族向けの服を取り扱っている店もちゃんとある。
ひとまずはそこで、当面の衣類を揃えることになった。
資金はあるから、1つくらいはオーダーメイドで作っておくのもいいかもしれない。
ちなみに、今の僕らはあえて地球での衣服を着ている。
遠い異国から訪れたというカバー設定に説得力を持たせるためだ。
久々にユニクロのシャツに袖を通したが、やはり楽でいい。
街を歩く人々が物珍し気にこちらを見ているのが分かる。
その様子に、護衛をしているカプチー君が少しため息をついた。
「わざわざ目立つような真似をするのはどうかと思うのですが」
「マリオン様とも話しましたが、僕らが万が一この世界で非常識な行動を取ってしまっても、異国から来たということにしてお茶を濁せるというのが一点。
もう一点は発破かけですね」
「発破?」
「明らかに既存の技術では説明できない服を目にしたら、欲しがりますよね。特に服飾店ならば」
「ほォ、じゃあその着心地よさそうな服を売ると?」
「まさか。そんなことしたら僕らが帰るときに困ります。そうではなく、見たことない技術をちらつかせることが狙いです」
「なるほど。他所では既に高い技術があるのに、うちは負けてていいのか、と煽れる」
「それで服飾ギルドが研究に力を入れてくれれば幸い。地球の技術を再現できれば最高。
もしそうなればソニックス家の服飾技術は相当高いものになり得る。ブランド化できますねぇ」
「うまくいくかな~?」
「まぁ簡単ではないでしょうけど、可能性はあるんじゃないですか?
少なくとも、実物を目にしたら何かしらアクションは起こすでしょう。
周もわざわざスーツ着ていきましたし」
交渉事だからと、仕事用のスーツを着てマリオン様に付いていった周。
地球でもなかなか高価なスーツだからなぁ、間違いなく目立つだろう。
変に悪目立ちしなきゃいいけど。
◆◆◆◆◆
「いやー、結構買えるもんだね~」
「言っておきますけど、銀貨って大金ですからね?」
奈美の言葉に若干呆れ気味のカプチー君。
女性陣はそれぞれ銀貨3枚ずつ使って服を買い込んでいた。
帰る当てがなく、当分この世界で暮らすことを考えれば間違いではないのだが、いきなり3枚も使って大丈夫だろうか。
まぁ、僕も1枚使ったけど。棚に眠っていた安物の服を何着か買っている。
その後は、通りをぶらぶらと歩きながら時々気になった店を覗いていった。
冒険者御用達の武器・防具屋なんかがあるのはこの世界ならでは。
他にも、日用品を扱う雑貨屋、本屋なんかも見つけた。
たぶん、僕が頻繁に通いそうなのは雑貨屋の隅にある文具のコーナーだろうけど。
いくらか街を歩き回ったところで小腹がすいてきたこともあり、どこかで休憩しようということになった。
ドンクス区域には飲食街みたいなエリアがあり、そこでテラス席のある喫茶店を見つけたのだ。
お洒落なテラス席があるということで気に入った奈美の提案でその店に入り、今はみんなして屋外席でお茶を楽しんでいる。
わざわざ目立つ格好をしながら屋外で休憩するというのだから、護衛であるカプチー君なんかは微妙な顔をしていたが、女性陣の元気の良さに押し切られてしまった。
客人をもてなす立場ということもあるのだろう。
彼も周に似て苦労人なのかもしれない。
フォックスさんやキルビーは大して気にしてないようで、一緒に菓子を食べている有様だ。
僕としても屋外で周囲の様子を見たいという思いもあった。
この席は人通りを眺めることが出来る。
こちらの様子を探る人々がチラチラと見えたが、目をそらしたり軽く会釈してごまかしつつ、通りの人を観察していた。
ぼっちスキル『人間観察』絶賛発動中である。
「理音、何か気になることでもあるの?」
「ん?いや、大したことじゃないさ」
隣に座っていた藍が、ずっとだんまりの僕を見かねたのかこっそりと声を掛ける。
いや、普通に女子会してていいのよ、みんな。
今は少し考えごとを……と思ったところで、見覚えのある男が視界に入ってきた。
「お、いたいた。おーい、じゃんけんの兄ちゃん!」
「あれ、あの時の……たしか、パックルさんでしたか」
ぼんやり通りを眺めていたら、見覚えのあるゴツい男が奥からやってきた。
こちらに声を掛けてきたのは、僕らがこの世界に転移してきたときに会った、ドワーフのパックルさんだ。
確か、鍛冶ギルドの重鎮と言ってたかな。
「お、菓子のねーちゃん達も勢ぞろいか。パッフィーの言う通りだったな」
「パッフィーって、さっきあたし達が寄ってた服屋さんだよね?」
「おう。えらく羽振りのいい客がいるってんで、その辺ではこの話で持ちきりよ。
見たことない服着てたってんで、もしかしたらと思ったが、やっぱり当たりだったか」
羽振りがいい……まぁ、確かに、かなり服を買ってましたね。主に奈美達が。
しかし、このいかつい人があのファンシーな店にいたんだろうか。
パッフィー服飾店は、主に女性向けって感じのお店だったしなぁ。
一応男性向けの服も取り扱っていたけど。
「あぁ、さっき若にも会ってよ。なんでも、兄ちゃんらは遠い異国から来たんだって?
さっき綺麗な服着た兄ちゃんが、ドンクスの親父と話し込んでたのを見たぜ。
何話してたかは知らねぇが、あの親父があそこまで下手に出るなんて初めて見たぞ。
若はずいぶん口達者なヤツを味方に引き込んだな」
「…周、何やってんだか」
「んでよ、若があんたらを探してたぜ?もし見掛けたら連絡してくれってよ。
リオンってのはおめぇさんだろ?なんか力を借りたいって言ってたぞ」
「は?僕ですか?」
「ちょっと待ってろ、いま呼ぶからよ」
そういってパックルさんは腰に付いていた道具を取り出す。
あれ、似たようなものを地球で見たことがある。
あれってもしかして…
「んーと、どう使うんだったか。おぉ、これだ。おい、森モヤシ!」
『うぉぉ!? いきなりなんですか!?そんな大声出して!』
「おう、ちゃんと繋がるじゃねぇか!いや、街でじゃんけん兄ちゃんらを見掛けてよ」
『まさか街中でコレ使ってるんですかこのアホめ!!これは機密の塊みたいなものなんですよ!』
「いいだろうが!若がこいつら見つけたら連絡しろって言ってたんだからよ!若はそこにいんだろ!?」
『ええ、いますよ!とっとと連れてきてください!賭場で待ってます!』
「…ってわけだ。ちぃと付き合ってくれよ!」
「いったい、何事なんですか?
まさか、あのマリオン様が賭場に行っていらっしゃると?」
「そのまさかよ。なんか面白いものを売り込んでるみたいだなぁ?」
カプチー君が青い顔をしている!
何だか分からないが、マリオン様が賭場で僕らのことを呼んでいるらしい。
僕らはさっさと喫茶店を後にし、パックルさんについて賭場へと向かうことになった。
その途中、僕はパックルさんが持っていた道具について聞いてみた。
「…しかし、まさかこっちにトランシーバーがあるとは思いませんでした」
「トラ…なんだって?」
「トランシーバー。それ、離れた人と会話できる道具ですよね?」
「おぅ、なんで分かった?」
「いえ、さっき話してたの、こないだのエルフさんじゃないんですか?森モヤシとか言ってましたし」
「はっ、あの野郎はともかく、魔工ギルドの連中は……っといけねぇ。
こいつはちぃと秘密の道具でよ、今は詮索なしで頼むわ」
あんだけ街で堂々と使っておきながら秘密がどうのというのもどうかと思うけど。
この人は守秘義務とか関係ないのだろうか。
しかし、トランシーバーか。
まさか、電子機器が存在するのだろうか?
◆◆◆◆◆
「ああ、来てくれましたか」
「マリオン様、いったい何事なんですか?」
ドンクス区域の一番外れに寂れた一角がある。
喧騒とはほど遠い裏通り、そこにあるみすぼらしい建物、その中に入ると地下へと通された。
ドンクス区域、唯一の賭場。
地下の薄暗い部屋に入ると、ガラの悪そうな男たちがこちらに注目を向けた。
なんというか、ヤのつく人たちの会合に飛び入りしてしまった気分だ。
正直ちょっと怖い。
「申し訳ない、実は少し困ったことになりまして…」
部屋の端にいたマリオン様が僕らに気付き、申し訳なさそうにしながら近寄ってきた。
周は……無事か。クラウディスさんと一緒に部屋の奥にいる。
あと、ロクマ先生っていったかな、いつかのエルフの男も一緒にいた。
周のヤツ、この殺気立った中でも平然としてるのか。
それとも、呼び出された理由を知っているから平気なのか。
周たちに声を掛けようと思ったところ、怖い男達の中の一人が、怒りに満ちた表情でこちらに向かってきた。
「テメェか!?あぁん!?
じゃんけんとかいうのを広げやがった野郎はっ!?」
…………は?
「おかげでアガリが少なくて困ってんだよ、なんとかしろよああん!?」
いったい何事だ―っ!?
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