人物紹介【ソナ】

【ソナ】第二章より登場。


一部一章にも登場しています。




無限に続く螺旋らせんの中で、

彼女の存在は神秘しんぴであり、

重畳ちょうじょうであり、いやしだった。


『時間がない聞いてソウヤ。

 この世界には私達の知らない、

 何かとてつもない秘密がある。


 この閉鎖へいさされた時間軸に閉じ込められた

 私だからわかる事がある。

 私達はつねに何かに監視かんしされている。


 停電して全てが停止した今しか時間がないの 』


『過去に戻る装置EAディープシーダイブシステム。

 これを使って過去に戻るにはとてつもない

 演算処理えんざんしょりが必要になるの。

 そして私は気付いてしまった。


 その処理に連動して地震が起こる事を。

 タイムラグはおよそ10秒。


 覚えて置いてソウヤ。

 この世界は何かおかしい 』



 

第一部【記憶きおく残映ざんえいたたずむ少女】



彼女はこちらに振り返り無音の言葉をつむぐ。



(私はここにいるよ)



フラッシュバックする


   つい

  おく

   の

    記憶



記憶きおく残映ざんえい



 追憶ついおく残滓ざんし



おさなき少女がじっとこちらを見つめる。




彼女は声を出さずに口をパクパク


2度動かす。




「んっ? なに?」




『忘れちゃった』




次々にかぶ残映ざんえい




人の気配けはいのしない浴室よくしつ




奥のブースから聞こえる音。




U字の壁の死角しかくかくれるようにして、

裸の少女が座り込んでいる。




湿しめった髪、


こうをくすぐるかおり。




「君の名前は」




『分からない』




『ずっと呼んでくれる人がいなかったから


  忘れちゃった 』




『ずっと一人だったの』




それはまるで、

彼女はこの世に忘れられた存在だと

言っているようで。




『やっと見つけてくれた』




『待ってたんだよ』




(ずっと待ってたんだよ)




孤独こどく言外げんがいふくませれた鼓動こどうは、


遠い昔に忘れて来た青草あおくさの香りがした。






     ─閉じられた世界─




    ─ゆがんだ時間軸じかんじく螺旋らせん




 ─アダムとイヴが閉じ込められた場所─






『お兄ちゃんは閉じ込められたの。


   私と共に永遠の楽園に 』




めぐる螺旋らせんのリング。




閉じ込め

..られたの..


..られたの..


..られたの..


 

彼女の深淵しんえんをのぞかせるその言葉が、


呪詛じゅそように耳に残り残響ざんきょうひびかせていた。


耳なりする様に鼓膜こまく圧迫あっぱくする圧力あつりょくに、


軽い目眩めまいを覚える。




まるでメビウスの輪の中に、

とらわれているようだった。





 .忘れないで.

.忘れないで.





そして最後に短く二回、口をぱくぱくと動かし、

下唇したくちびるんで此方こちらをもの悲しげに見つめた。



何かに気付いて欲しそうに、

何かを心にきざように、

何かをうったえかけるように。



そして僕に背を向け壁に静かに手をついた。


少女が壁の一角に手をつくと、

その全身が赤い光沢こうたくに包まれ、

壁の中に吸い込まれる様に消えて行った。


少女が消える瞬間、

かすかに少女の声がした気がした。






       忘れないで


 

 

 

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閉鎖都市【ナビ用語解説】 夜神 颯冶 @vx9

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