南沢という男
「私は『被害者遺族』という立場を利用され搾り取られる人間たちの姿を見てきました。
ええ、それはもう嫌になるほどね……。
うつ病になりかけたことさえありましたよ。
あなたは……しかし、ええ……そうです。
あなたはそうはなりたくないのでしょう?
まだ女子高生ですしねぇ、明るい未来を愚民に踏みにじられたくないのは分かりますよ。」
「……別に明るくはありません。
修太郎が殺されて……これからの未来……。」
「おっと、失礼しました……記者ともあろう者がこんなことを言うようではいかん。
まあとにかく……あなたは戦うことになるでしょう
『正義』という名のおぞましい魔物と……。」
「もう落ちるところまで落ちたし……向かってくるなら戦います。
修太郎が浮かばれないじゃないですか……殺されて、利用されて。
修太郎はそんなことのために生きてきたんじゃない……それなのに……。」
碧は泣きそうになるのを何とか堪える。
この場でそういうことになるのはまずい。
「うむうむ、それで良い。
ま、私は私でやるべきことをやるが……。
それにあたって、あなたに許可を得ておきたかったのですよ。
必死に生きる人間の足を引っ張るような人間には何の価値もありませんからねえ。
……んー、やっぱり苦いのか甘いのか分からないコーヒーは苦手だ……。
苦いなら苦い、甘いなら甘いでハッキリしてもらいたい……。」
この南沢という男の記者としての本質がここに現れているのかも知れない。
物事をハッキリさせたがる性格。
曖昧にすることに意味はない。
妥協によって築かれた平和は容易く崩壊するものだ。
「……私も同じです。」
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