第13話 辻占

※ガネシとは、ヒンドゥー教のガネーシャをモチーフにした架空の生き物です。ねずみのラッタ♂と子猫のビラロ♀と一緒に地球でたくさんの経験を積んでいます。


「ガネシ、今日は面白いお話してあげるね」


「面白い話?なんだろ、ビラロがそんなこと言ってくれるの初めてだね。楽しみだな」


「きっと大して面白くないに違いないぞ」


「ラッタは黙っていて。聞きたくないなら散歩に行ってきてもいいのよ」


「・・・悪かった。オイラもその話聞きたい」


「あら・・・今日は素直じゃない。私の方が罪悪感を抱いてしまうくらいよ。ラッタもじゃあそこに座って聞いてね。始めるわよ。人間界を見てきて、たくさん面白い現象や出来事、人間が信じているものがあって、その中のひとつにね、辻占というものがあるの」


「ツジウラ?」


「そう、辻占。日本という私たちが今いる場所で行われた占いの一種なの」


「ウラナイ?」


「ごめんね、ラッタ、わからないことがあったらそうやってその都度聞いてね」


「・・・なんだ・・・今日のビラロはやけに優しいぞ・・・。何か裏があるんじゃないか」


「裏なんてないわよ。占いとはその人の置かれている現状、過去や未来、その人の心や運勢などを見ることができるのよ」


「ガネシみたいだな!」


「そうね、ガネシの神通力のようなものね。でもその手法は見えないものを見るというよりも、誕生日から星の動きを見たり、名前の画数から統計的にどういう人生を歩むかを判断したりするものなの。それでね、辻占の面白いところは、誰でも簡単にできるということ」


「オイラにもできるかな!?」


「えぇ、すぐにできるわよ。簡単に説明をすると、すれ違う人が言っていること、偶然目に入る文字や数字、たまたま聞いた音楽の歌詞、自分の周りに起きた出来事などの内容を元に占うものなの。例えばね、今日のお昼ご飯何食べようかしらって思っている時に、誰かがお寿司の話をしているのを聞いて、そうね、今日はお寿司を食べに行こうかなって思うじゃない。そしてたまたま食べに行ったお寿司屋さんで運命の出会いがあった、なんていうこともあるのよ。そうやってアンテナを常に張りめぐらせることによって偶然のような奇跡のような出来事に導かれていくの」


「よし、オイラ今からちょっと散歩して来る!」


「あれ、もうラッタ出かけちゃったよ。気が早いなぁ。でもなんとなくビラロの言っている辻占がわかる気がする。人って見えないところで様々な方向に導かれているよね。本当に不思議だなぁって思う。この前ビラロが話してくれた運命と宿命の話のように、偶然に見えて、そうなるようにできていることってたくさんあるよね」


「そうね、もしかしたら人間の心が不完全でこの世界が闇に覆われているのも、人間が環境を破壊しているのも全て意味があるのかもしれない。そしてガネシと私たちがこの世界に降り立ったのも。偶然のようで必然だったのかもしれないわね」


「ひとりひとり運命と宿命があって、どの命にもどの人生にも優劣がなくて、全ての命を平等に尊重すべきだね」


「そうね、そのことに人々も気付いて欲しいわね。どうしても自分が一番可愛く思うのが人間だから。誰かのことを想って誰かのために生きる、利他の精神に気付かなければいけない、そんな時代に突入しているの」


「まだまだこの世界は、人間の心は改善の余地がある。未来に期待が持てる証拠だね」


「私たちも頑張りましょうね。この世界を救うために。人間を救うために」


「うん!ありがとう、ビラロ」


「こちらこそ!」


「ただいまー・・・」


「あら、ラッタ、帰ってきたの?どうしたのよ、そんなにびしょびしょになって帰ってきて。雨降ってないでしょ」


「散々だったぜ・・・。出た瞬間に猫に追いかけられたんだ。逃げ回っていたらドブに落ちた・・・。帰ろうとしたら今度は犬に追いかけられて、カラスにまで突っつかれそうになった」


「その出来事に隠されたメッセージを教えてあげましょか」


「何!?隠されたメッセージなんてあるのか!?」


「ビラロ様のお話は最後まで聞きましょう」


「なんだそれ、そんなメッセージあってたまるか!オイラは外に出る!」


ラッタが外に出た瞬間、ラッタの悲鳴が辺りに響き渡った。


「また何かあったのかな・・・。大丈夫かなラッタ」


「放っておきましょ。それよりもこの世界には私の興味をそそるものばかり。魔法とか霊能力とか占星術とか。また一緒に話しましょうね」


「うん!ありがとう!楽しみにしてるよ!」

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