第3話 帰り道にて、
時間はまだ4時過ぎで,空を見上げれば厚い雲に覆われているものまだ明るい。街は徐々に変える人が増え,大通りに出ると人が多く家路を目指している。
雨はサーサーと降り続けている。
「どこだろ……」
幸太は傘を指しながら早足で下を探しながら歩く。しかし,通学路を半分ほど来た所だが,まだ見つかる気配はない。
交差点で赤信号を待っていると,向かいの道路の途中でなにか光るのが見える。
「あ,あれかな」
赤信号がもどかしく,幸太は足踏みをする。水滴が周囲に跳ねたが,幸太は気にしない。
信号が青に変わる。幸太は,光るものに駆け出したが,近づいてくれるにつれ,その足はゆっくりになっていた。
「違うじゃん……」
そこに落ちていたのは,捨てられたビニールに包装だった。
「くそっ」
少し離れるて振り返ると,とそのビニールの袋が光るのが見えて,幸太は思わず水たまりを蹴り上げた。
幸太は焦り始めていた。徐々に暗くなるあたりは,幸太を急かす。早足だった足取りは,どんどん小走りになり始めていた。
学校から帰る児童らは,雨の中,小走りで逆走する幸太を見て,何事かと振り返る。幸いなことに幸太と同じクラスの子供らはいなかったため,幸太は足元に集中することができていた。
探しているうちに,遠くのスピーカーからキーンコーンカーンコーンとチャイムがなる音が聞こえてきた。
『もうすぐ家に帰る時間です。良い子は帰りましょう』
「みつからない……」
口から弱気が漏れる。見つからないのでは,という気持ちが幸太の中でいっぱいになり,泣きそうになった。しかし,幸太は首をふって悪い考えを打ち消して,さらに探す。
学校までの道のりはあと,曲がり角を2回曲がったら着いてしまう。もう,道には無いんじゃないか,教室の中かもしれない。しかし,この時間にまだ学校って入れるのだろうか,と幸太にふと疑問が生まれる。
「この道にもない……」
幸太は水たまりを踏みながら曲がり角を目指す。跳ねた水滴が膝にあたるがもはや気にならなかった。
角を曲がりかけた,その時だった。
(……?)
なにか音が聞こえる。それは鮮明な音ではなかった,町内放送のような少しひび割れた音。幸太の足がおもわず,角の前で停まる。
耳を済まして音を聞いてみると,それは音楽のようだった。サーサーと響く雨の音の中に,その音は確かに鳴っていた。人の歌声,少し冗長なラッパやクラリネットの音。
(古い曲?)
記憶の中で,テレビの昭和特集のような番組で聞いたことのあるリズムだ。よく聞くと,なにか〜〜マンとの名前を連呼しているようにも聞こえた。
幸太は,恐る恐る角から,その先を覗く。
そこにいた存在は,人だ。人気の無い道に,しかしそれは,明らかに異質だった。
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