第5話 彼女と元彼女


「…………だれ?」


「うん?」


「相手は誰なの? 私より可愛い子?」

 とりあえず比較対象として私を出す。

 元カノの私となら比べやすいと思ったから。

 でも正直に言えばあまり比べて欲しくはないけど、何か教えてくれるかもしれない。


 はぁ。

 こんな事なら……。


 どうせ別れるならあの日正直に自分の気持ちを伝えておけば良かった。



「……うっ、うそだよね?」


 私は後悔した。

 そう思うと少し涙が……。


「うん。嘘だけど」

 彼の一言にクラスの静寂が終わり、騒がしくなる。

(え? それなら良かった……)


「なら放課後時間あるよね?」

 何故かわからないけど安心した私がいた。


「うん」

 コクりと頷く彼。

 そんな彼を見て私もコクりと頷く。


 私の秘密を唯一学校で知る彼が誰かの物にならなかった。

 そう思うと私の心は安定を取り戻し始める。


 一年前の春。

 私は彼に救われた。

 それがきっかけで仲良くなり、告白して見事付き合う事が出来た。

 だけど、結局は私が振った。

 まぁ映画やアニメ、後は小説でもよくあるお話しだしそんなに不思議ではないと思う。


 例えば一冊の本には夢があり希望がある。

 そして一冊の本には作者の気持ちが含まれ、時に作者が書いた物語が勇気をくれることだってある。少なくとも私はそれを知っている。私が当時大好きだった人がそれを教えてくれたから。


「ありがとう。なら放課後私達の思い出の場所で待ち合わせね?」


「うん」


 私が返事をすると、キーンコーンカーンコーンとチャイムの音が鳴った。

 そして教室の扉がガラガラと音を鳴らし、一人の女性教師がクラスに入って来た。

 私達の担任の先生だ。


 女性教師はクラスに視線を泳がせて確認する。

「えっと……皆いるわね……?」


「よし。皆いるわね、なら出席確認はこれで終わるわ。今から始業式なので皆廊下に並んで、並び終わったらそのまま体育館に行くわよ」


 皆が一斉に立ち上がり、廊下に並ぶ。

 そして皆が並び終わると女性教師を先頭にして皆が体育館に向かった。


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