第3話 私は君を探している
冬が終わり春が来た。
私の心は新学期と言う事もあり、ワクワクしていた。
今度は誰と同じクラスになって、誰と仲良くなれるのか。
だけど、それと同じぐらいに私の心の中は不安で一杯だった。
どんなに辛くても私はこれから一人で病気と闘っていかないといけないからだ。
私は友達に病気の事を隠している。
きっと知ったら皆私の事を心配ばかりして、過保護になるからだ。
そんなの私が楽しくないから嫌だ。
本日4月6日始業式の日。
私は去年彼氏を振った。
理由は「他に好きな人が出来たから」と言う事にした。
まぁ半分は本当で半分は嘘なんだけど。
春の桜が咲き誇り、太陽の陽が暖かく感じる。
だけど、どうやら私の心の中にまでは太陽の陽は届かないらしい。
いっその事、暖かい陽の光で私の心の不安も照らしてくれればいいのに……。
「久しぶり、葵」
「うん久しぶり。元気にしてた?」
私は通学路の途中で去年同じクラスで仲が良かった男子生徒のタツミ君に声をかけられた。相変わらずいつもタツミ君は笑顔だなと思いながら、私も同じように笑顔で返事をする。
「もちろん。そう言えば春休み何度か遊びに誘ったのに何で来なかったんだ?」
「実はその日先約で美佳とデートの約束があったの」
「そうだったのか。それなら言ってくれれば日にち変えたのに」
「ゴメンね。実は両親の祖父母の家に帰ってたりもしてたから中々時間が取れなくて言いにくかったの」
「それなら仕方ないな。なら今度また遊ぼうぜ」
「うん」
私はタツミ君と楽しく会話をしながら学校に向かう。
その時、なぜだろう。
私の視界の隅に信号を待っている彼の姿がハッキリと映った。
(あれ? 元気なさそうだった?)
私は久しぶりにチラッと見えた彼の事が少し心配になる。
多分私の中で彼を愛する気持ちがなくなっても大切な友人というカテゴリーに所属しているからなのかもしれない。
私は心の不安を掻き消す為に元気に振る舞っている。
私いつから無理してたんだっけ。
あぁ……私の心の中ではまだ春が来てないんだ。
何となくだけど何かが足りない気がするの。
もう一度君の声を近くで聞いたらその答えが出るかもしれない。
もう一度君の手を握れたらこの私の不安をかき消してくれるのかもしれない。
私の心が温もりを求めてほんの少しだけ揺れ動き始める。
そのまま新しいクラスに行くと、苦笑いしかできなかった。
それは向こうも同じだろう。
黒板に白いチョークで書かれた座席表に向ければ当然である。
私の席の隣は彼だった。
――神様はホント私に試練しか与えない
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