第2話 やっぱり迷惑ですか


 春休み。

 私は仲の良い女友達の美佳とテレビ電話でお話しをしていた。

 何でも美佳が暇だったら、一緒にお話ししようよって感じで特にそれと言った理由はなかった。


『ねぇ、葵はあの子と別れたんだよね?』


「うん」


『未練とかもうないの?』


「う~ん。ないと言えばもうないかな。確かに彼には感謝してるよ。でも私が好きだった彼はもういないから」


『そうなんだ』


 美佳は私の顔を見て、頷きながら言った。


 よく男は恋を引きずって女はサッパリという。

 世間的には男は名前を付けて保存、女は上書き保存とも言われている。


 私もその例外ではないと思う。

 別に新しい出会いを求めていたわけでもないけど、自分が当時思っていたよりは彼の事を引きずる事はなかった。



 私はあの日の事を思い出す。

 あの日別れてからずっと辛くて年明け前まで泣いていた時の事を。


 

 テレビ電話が終わり、私は日課となっている読書をすることにする。

 書籍とネット小説どちらの作品も私は好きである。

 書籍には書籍の良さがありネットにはネットの良さがあるからだ。


 でも個人的にはネット小説の方が手軽に読めるから好き。


 そのまま私は面白そうな作品はないかなと目を泳がす。

 そして小説サイトを見ていると、彼のコメントを偶然見つける。

「あれ、まだ本の世界にはいたんだ……。アカウントも間違いないし」


 久しぶりに彼のアカウントを見て見るとそこであるメッセージを発見した。

「新しい一歩を近々踏み出してみようと思います。作品のタイトルもまだ主人公とメインヒロインすら未定ですが応援よろしくお願いします」


 その時、急に心臓の鼓動が高まる。

 多分、私の心が求めているのかもしれない。

 もう一度、あの人の作品を読みたいと。


「凄い……。学校ではいつも一人なのにネットの中では沢山の人に囲まれて応援されてる。やっぱり君は凄いな……」

 気付いた時には私は手に持ったスマートフォンの画面を見て呟いていた。


『応援しています』

 コメントを送信するボタンに触れる瞬間、手が止まった。

 そしてメッセージを削除した。


「今更私に応援されても迷惑だよね……」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る