葵sideストーリー もう僕の隣には君がいない、だけど今は違う君がいる

光影

第1話 本当にこれで良かったのかな


 『私立白雪学園』そこは一人の少女が通っている高校。

 その高校にある大きな桜の木の下。

 少女はある少年との思い出が詰まった桜を見ていた。


「私……なんであんなひどい事言っちゃったんだろ」

 一人の少女は目から涙を溢しながら静かに呟いた。

 目から零れる涙。

 それが意味する理由。


 ――失ってからじゃないと気づかない物もこの世にある


 そう実感した日。


 私が好きになった君はもう私の隣にはいない。

 私を救ってくれた君はもう私の隣にはいない。


 私では……君を本当の意味で……幸せには出来ない。

 だって君は……私のせいで……。 

 私のせいで君が不幸になるのなら、私は君の彼女を止める。


 だから去年の冬――クリスマスの日。

 私は君に最低な嘘をついた。

「ごめん……わっ……わたし……」


 もう一人の私が必死に止めてくる。

 私の身体を震わせ、口を重くして必死に抵抗してくる。

 それでも言わないと――君の事が好きだから!


「今まで嘘ついててゴメン。実は他に好きな人がいるの……だからさようなら……」

 そう言った瞬間、私の目から沢山の涙が零れる。

 私はあまりの辛さに君の横を駆け抜けて夜の街へと消えた。


 もしかしたらと期待した。

 君が私を追いかけて引き留めてくれると。

 臆病な私がそれを心の何処かで強く願い、強く望んでいた。


 しばらく走って、私はほんの微かな希望を信じて後ろを振り返る。

 すると君の姿は何処にもなかった。

 変わりに目に入ってきた光景は、雪が降り積もった夜の街。

 それと楽しそうな沢山のカップルが居て赤い帽子に白いひげが印象的なサンタさんだった。



 ――私の瞳から零れ落ちる涙は悲しみを溶かし


 ――この雪と同じようにいつか溶けてなくなるのだろうか?


 そんな事を考えている時点で。


 ――私は後悔しているのかもしれない


 それから私達は一年生が終わるまで学校は同じだったけどクラスが違う事から話す事はなくそのまま春休みを迎えた。


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