第2話 出撃!3(サン)ビークル
「こちらライジング・サン、ショータ。ルナ・ポートにて、敵モービル9機破壊、モドキもすべて排除完了。そちらでも確認できてる?」
銀色に真っ赤なラインのカラーリングはサン・ビークル1号機。(軍の認識では50m級カスタマイズマルチ・ビークルAタイプと呼称)その謎の機体に乗った16、7歳には見える少年が自分達の移動母艦基地「サン・ベースⅠ」とのやり取りをしていた。
母艦基地は海上空母2隻を船底同士を合わせてくっけ圧縮したような、極端に言えば小判型をした超巨大などら焼き!の各部から大小のブリッジ・デッキ、アーム類が突き出た外観をしており整然とした系軍の防衛艦隊を見知った者からすればひどく異質・異様に見えた。
その皮に当たる2枚の大甲板に挟まれた空間にはフレームと構造物で囲われた「ダイ・
さらに90度と、180度の位置に突き出ている航行ブリッジ・戦闘管制ブリッジでは少人数精鋭ではあるが、4~5人ほどの若い男女クルーがシートを占領しつつも忙しそうだった。その中間にもフレーム状の渡り廊下の出っ張った水滴型デッキ内に、白髪の老イケメン執事が燕尾服にティーポットの似合う部屋・・?薔薇の蔦様に絡まる意匠のデザインをもつ強化コーティングを施された黒檀のドレッサー。照り返す明かりは高い天井?にきらめくシャンデリア。
ティーテーブル型デッキカウンターには曇りガラスに切子状模様の入った流行りのフラワーベース。もちろん色とりどりの花々が咲き誇っている。この部屋に足を踏み入れた者は思うだろう。
「えっここ宇宙空間だったよねぇ・・。」
その上に誰のためか「私はコマンダー」と書いてあるプラカードをこれ見よがしに持って見事なジョ〇ョ立ち、で差配をして戦闘からお茶の用意まで見事に
仕切っている。
「ショータ様、初恋の姫君セナ=ミゼラリー様をすんでのところでお救い出来たこと、よろしかったですな。」とふっと視線を脇に控えるメイドさん?に合わせ「ミナーナ、今日はフォートナム&Mで・・カップやポット、お湯の温度も
「はい、コマンダー。」ミナーナと呼ばれた娘?一見してミニスカメイド服と見間違ったそのスペーススーツも銀白色と黒のツートンで真紅のラインの縁取り・リボン状放熱板、少し広がったミニスカ型スラスターガイドに引き締まったウエスト様ウエポン・ラッチ。首肯して背を向けお茶の用意にブリッジを出る彼女の臀部には荒事用か物騒な電磁サーブルにショックハンドガンが見える。「サンベース」の宇宙メイドさんはみな戦えるバルキリー?でもあるようだ。「戦果もおやつの時間も上々ですな。フンフ、フ~ン」
戦闘基地というよりもオシャレな貴族の執務室かよ!といった雰囲気をたたえる「サンベース」コマンダー・ブリッジ内部。防衛軍のイカツイ無骨なイメージの艦艇とは違って舷窓などは無くその代わりに内装同様に薔薇の花をかたどったいささか装飾過多のマルチモニター類が数々据えられており3台のビークルに対応したモニターがそれぞれの様子を伝えていた。
「いや~状況を見極めようとしすぎて、彼女の美貌に見とれて危うく手遅れになるとこだったよ。」
ショータと呼ばれた少年は真っ赤になっててれた。隣のモニターには黒髪をおかっぱの様に切り揃えた小柄な人形の様な超美少女がかなり呆れた表情をしていた。
「次の
黒髪オカッパの一部銀メッシュの入った部分を気にするように手櫛でといて小柄な小学生にも見える美少女が心底あきれ気味に吐き捨てた。
「・・・バッカじゃないの!エロガキ!女なら誰でもいいの?・・あ、結果はぜんめつダカラ。5機とも撃墜よ!・・。」
「よろしい、
「合格、不合格なんて・・イヤよ!マシーンじゃなくてあたくしがテストされているみたいですわ・・。」
少し桜色のほほをぷっくり膨らませるかわいい表情の
「そ、それで・・オヤツが決まるなんてなおさら許せない・・・・不公平。」とても現在パイロット3人の中で最年長の19才の才媛とは思えない発言。
しかも体型はみごとに小学校4年生並み。発言後ずり落ちた赤縁三角メガネを人指し指で押し上げる。しかもその指もフライトスーツの袖が長いのかこぶしまで隠れた袖から指先だけ出しているありさまだ。
「かしこまりました。では一律にお配りいたしますので。」とにこやかに答えるコマンダー老、彼の燕尾服状スーツとてメイド嬢と同様にそっくりな高性能特注スペーススーツだ。
「わかった・・、ならいい・・。」どう見ても無理な背伸びをしてキャリアウーマンのものまねをする小4にしか見えないのだ。
彼女が納得したのを見て最後の3番目に移る。
「エイミー様は調子はいかがで?」
ビークルのコクピットで行儀悪く黒のロングブーツの両足をハンドルにかけてさながら休憩中のトラック運ちゃんの様な姿勢でコマンダー老に豪快に返事する、レザーの黒ツナギが似合うナイスバディの赤金髪女性。
「おうっ!エイミー=ヴァン=ヘルシング、ニューヨークのは10機全機撃墜だぜ!」返事は良かったのだがその操縦姿勢に少々問題があった。
「おほんっ!エイミー様、素晴らしいおみ足ですが失礼ながら・・お行儀がですな・・その少々・・それと専用のフライトスーツがサンベースにご用意してあったはずなのですが?」とモニターと高性能マルチモノクル越しに睨みつけレンズを光らせるコマンダー老。
「わりぃな!ただこの格好、御先祖様伝来なんだ。あたいもちょっとだけハズイんだけど、着て行かねーと爺さんとばあちゃんがすねちまうんだ!しかも、コレ着るときの作法ってのにうるさくってさ。・・・上下とも下着禁止なんだぜ!18の乙女がさぁ~バストの形が崩れたらど~してくれんだっつーの
「わっぷ!エミねーちゃんってば俺、事故っちゃうよ!」
「バカ!・・ショータ!・・事故れっ!・・・エイミーも破廉恥、風邪ひけばいい・・。胸もたれちゃえ!」いかにも腹立たしいとばかりに
「皆さま0.8AU先にヒカゲロイド艦隊とヴァンパイド2体発見致しまして御座います。」と告げたとたん3人が無駄話を止めてデータを注視する。
「解析終了・・データ送る!・・タイプA2体。」
「「さすが
「「エイミー!用意ぐらいさせてー」くれー」・・
ヒカゲノイド聖地奪還艦隊司令座乗艦[血1号艦]艦橋内
「聖地への侵攻は失敗か死ザン」指令席の血濡れの化け物がしゃがれ声で話す「はっ奴らの残党の子孫かと惨サツ様」次席に立つ幽鬼のごとき女の影がそれに答える。また血濡れの化け物が「忌々しいことよ、ヴァンプァイドで蹂躙せよ!」と女の化け物に命令する。「はっただちに!・・・ヴァンプァイド1・2号
射出!」艦の横腹に付いたリボルバー・ドラム型のカタパルトからブレットカプセルに入った通称ヴァンプァイドと呼ばれる生物応用機械化獣体が2体発射された。
生物と分類上言われるが、生きてはいない。他の侵略者達と同じ真祖から与えられた[かりそめの命]で駆動する戦闘用巨大ビークルの一種だ。
ヴァンプァイド級のバトル・ビークルが急速に迎撃軌道に投入される。
他のビークルのごとき小物とは出力、戦闘能力、機動力、スピードなどが段違いに違う。接近するトップのライジング・サンの頭を押さえる様に突っ込んで来る。
凄い機動力と反応だ的確に3機のビークルを押さえにかかる。
先頭のショ-タが悲鳴を上げる「エミ姉、だめだ突っ込まれるぅー!」「まかせな!サイト・アウト!再ジャンプ!!」あまりの機動に二人が驚く「「えっ!」」
それにはまず「ミラーサイト・ジャンプ空間置換」法を知る必要がある。
(合わせ鏡の中の鏡像のように空間的に前後に連なった空間置換を行い、ジャンプと言ってはいるが、長いジャンプをしているのではなく。空間置換を行っている空間でつまずき続けている状態で目的地まで運んでもらう航法。)が、前述の「ミラーサイト・ジャンプ空間置換」法。エイミーは線路を降りているのに、(ミラーサイトをサイト・アウトで外した。)今までの慣性で無理やりポイントを外した空間置換を実施。敵と自分たちの位置を入れ替え運動エネルギーをそのままに二つが遭遇しないようにした。
「「バカな!」奴らは狂人か?」化け物も驚く。コマンダー老もどどっと汗を出す。
「確かに突っ込まれはしませんでしたが、半歩間違っても別宇宙まですっ飛ばされても文句言えない所でしたな。エイミー様以後使用禁止で・・・」「え~っ!つこうたらあかんの~」「「「そりゃダメでしょ!」」」コマンダー老以下二名全力で言葉で突っ込む!
ヴァンパイド一号・二号共、急激な軌道変化に付いていけずに見当識障害を起こしている。
「くうっ聖地奪還艦隊[骨五号艦]主砲連射!当てずとも良い牽制だ!同時にスカウトミサイル、機雷ミサイルで撃ち落とせ!我が艦よりそちらの方が近い。」
「骨五号艦、自動艦長了解。・・指令実行。」随伴艦は自動操艦のフルオート戦艦だった。ビーム砲・実体弾砲があたりはしないが近い軌道で降って来る。
「以外に照準が正確でうっとおしい~!うち粘着男はきらーい!」とエイミー
「ショータ男でしょ何とかして!」これは
「今、性別まったく関係ないよねっ!」もちろん男ショータだ!
どどーーん!どがーーん!至近距離でミサイルの爆発が相次ぐ。
「「きゃーっ!」」「うわーっ!」
ようやく体制を立て直したヴァンパイド1号・2号も確実に破壊してやろうと接近して来る。
「ピンチですな、坊ちゃま。お嬢様方・・では変形準備を!」とコマンダー老
「コールキーOK」コンピュータの返答が来る
「よ-し変形ライジング!」とショータ
「わたくしも変形シャイニング」が
「おーいおじいやん、うちコード教えてもらってへんえ~」なぜかエイミー
「「「・・・なんでっ~!!」」」
「実は・・伝統のコスチュームで出撃前に爺さんともめたんや、着る・着ぃーひんで言い合いになってな~。説明受けてるヒマあらへんかってん。」
「しかも、可愛ぶって!エセ関西弁!胸あるだけならまだしも~あたくしに
対する挑戦ね!」突っ込むが
「イヤちげーし!お子ちゃまなんて気にしてねーし!」エミ姉、禁句だぜ・・
「あたしの方が年上だーーー!!」
「それ!自爆っしょー!まじっうけっ ケラケラケラッ」
「ムキーー!」コクピツト内で地団駄ふむ美少女。
「「むき~?!」」
瞳のハイライトを消したオウム返しの2人。ショータとエミ姉・・。
「まじ~ホントにそれ!言ったヒト・・うち初めて見た・・
「なに?それ・・」ショータ、心のつぶやき。
すでに彼には理解できないふたりになっていた。
「(これが将来のおれの嫁さん候補・・。ダメダ分かり合える気がしない。)」
前途、多難だった。
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サンダイオー用語講座
・50m級カスタマイズマルチ・ビークル・・・陽暦51年には
20mクラス、35mクラス、50mクラスの3タイプが通常、
一般的なクラスサイズ。でのオリジナル(万能)ビークルの事
・20mクラス・・・(Bクラス)陸・空などで通常使用されるサイズ
旧暦の戦車・戦闘機をイメージすると分かり易い。
・35mクラス・・・(Aクラス)特殊環境下使用クラス。宇宙空間や
水中作戦使用タイプ(生命維持に余分に空間が必要)
・50mクラス・・・(Sクラス)全環境下で換装などをせずに自由に
作戦行動できるクラス。
・ジョ〇ョ立ち・・・いにしえの幻の不治の病「中〇病」の症状のひとつ
・赤縁三角メガネ・・・昔の「ザアマス眼鏡」「キャリアウーマンめがね」
「出来るお姉様メガネ」などなど異名あり、実体は・・。
・ヴァンプァイド(ヴァンパイド)・・・生物応用機械化獣体[かりそめの命]で駆動する戦闘用巨大ビークル(生体ロボット)仕様・諸元・性能など多岐にわたる。
・「ミラーサイト(・ジャンプ)空間置換」法・・・理論的には分かっているが、太陽系軍内ではいまだ実用化されていない準亜光速航法の一種。
以上 第2話 出撃!3ビークル 終
次回 第3話 出現、サン・ダイ=オー
陽光力 無敵(ヨウコウリキ ムテキ)ロボ サン・ダイ=オー ズバーP @kou1dayo8
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