第一話 出会いは軽く
朝日が昇り始め、外から
“
そう解説する目の前のゲームの画面から目を逸らして、
メイン画面には、様々な少女が表示されており、ゲームのジャンルがいわゆるギャルゲーと呼ばれる類のものであることを容易に想像させる。
しかし、別にギャルゲーが好きと言う訳では無かった。
それは部屋の
天井まで高くある
世間一般ではオタクと呼ばれるものであるかもしれないが、僕は自分のことは広く浅くのタイプのオタクだと思っている。
何か一ジャンルに熱狂するのではなく、多くのものをやる。
ゲームに棚に戻しながら、時計を見る。
時計には四時二四分と指示されており、日付は平日を示していた。
「休みの日でもないのに、徹夜したのは久しぶりだなぁ」
普段ならやり込んでも、学校に支障をきたさない様に徹夜はしないように
徹夜するなら次の日に学校がない日にという取り決めをしていた
しかし、買ったばかりのゲームが思いの
「まぁ。偶には仕方ないか」
熱中してしまっては止められないのはオタクの性だと割り切る。
本棚に入りきらなくなり、ベッドに置きっぱなしにされた本をかき分けて、布団の上に倒れ込む。
(今から寝て、ご飯を抜けば二時間は寝れるな)
頭の中で登校時間を考えて、どれくらい寝れるのか計算すると念のためスマホのアラームを設定して枕元に置き、目を閉じる。
(にしても…)
直前までやっていたゲームのことを思い出す。
ゲームの内容は、記憶を失っているヒロインとの学園恋愛ものというありがちなものではあった。
そして、その途中のルートとして、ヒロインが現在の記憶を取り戻すよりも前に、
セーブする直前の場面も、前世の記憶を取り戻したヒロインのことを何と呼ぶべきか悩んでいるというものであり、ここで前世の名前で呼ぶか、
その助言の一つである先程まで見ていたテキスト。
“記憶はその人の【今】の性格を形成する。”
この言葉が
「なら、
時々テレビなどで特集される、前世の記憶を持つ人というものと照らし合わせながら考えるが、思考は長く持たなかった。
次第に眠気は限界に達し、考えようとする脳の機能が停止する。
僕は考えることを諦め、訪れた眠気に抗わずに意識を深く沈める。
予定通り二時間で起きることが出来たが、やっぱり寝足りない。
普段ルーティンをしっかりしている分、こういう偶の行動が響く。
二度寝をしたいという誘惑があるが、わざわざ遠い学校を選択することを親も許してくれたのだ。
その信頼に
着替えが終えて下に降りるが、両親は共働きのため既に誰もいなかった。
僕は棚から買い置きのパンを手に取ると家を出る。
電車に乗り、
駅には多くの人で溢れかえっている。
最初の頃は、田舎ではありえない
駅を出て、しばらく歩くとようやく学校に辿り着く。
家を出てから二時間。何とかホームルームの開始時間ギリギリには教室に辿り着くことが出来た。
教室の扉を開けると、ホームルーム前ということもあり、流石にほとんどの人が既に来ており、教室内は賑やかだった。
内心、僕が一番最後かと思っている扉から教室内を見ていると後ろから声が掛かる。
「どいて貰ってもいいですか? 中に入れませんので」
丁寧ながらも冷たい言葉に驚き、僕は後ろを振り向く。
そこには身長160センチ後半と少し男子の中では低い自分の肩程度の大きさの女子生徒が立っていた。
僕はその女子生徒のことを知っていた。
同じクラスメイトなのだから知っているのは当然なのだが特にその容姿もあって、有名だった。
それが目の前の女子生徒の名前。
腰まで掛かりそうな長い髪は大切に手入れされているのが見て取れる程に綺麗で、光る
同じクラスとは言え、まだ入学して一ヶ月であり、全員お互いの距離を確かめながら仲の良いグループを作っている最中。まだ、
もっと言うなら、
そのため、間近に立って話をする場面とはほぼ無い。
だからこそ、初めて近くで見てその美しさを
そしてその美しい顔を真っ直ぐにこちらに向けて、問い詰めるかのような鋭い目線を飛ばしていた。
その目は早くどいて欲しいという意思が良く伝わってくる。
ここで退かないという意地悪をする理由もないので、素直に身を引いて、横にずれる。
「ありがとうございます」
一言簡素にお礼を言うと、中に入っていき、窓際の一番前にある席に座った。
座るまでの間に、多くの人に挨拶をされ、そして笑顔で返しており、コミュニケーション能力の高さの
そのコミュニケーション能力が
というよりも、それほどの笑顔を出来るなら、何故僕に対しては簡素的だったのだろうか。道の邪魔をしていたので、僕が悪いのだが、他の人と笑顔で挨拶を返すところを見ていると、不思議と違和感を得てしまう。
しかし、その理由を考えても仕方ない。
どうせ今後、関わることなどほとんどないのだから。
そう自分に言い聞かせて、廊下の先に見えている担任が来る前に席に座ることにした。
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