第3話 安い地球儀

 大学が春休みで特にやることもないので、俺は毎日そうして地球儀を蹴っていた。気が触れたのかと思っているのか知らないが、次第に姉の怒号は飛ばなくなってきた。

 俺、地球儀でも蹴るの得意なんじゃね? 地球儀蹴鞠とかやったらいい線行くんじゃね? 何だそれ。とか考えながら地球儀を蹴っていると頭の上に蹴った地球儀が落ちてきた。

「痛い…。このやろう…。」

と地球儀を拾い上げると地球儀に貼られていた紙が剥がれてきていた。よく見ると黒いプラスチックの球体にレンズ型の紙が何枚も貼られてできていた。小学校の時にある同級生が俺にくれたっていうことは結構安いものだったんだろう。少し剥がれているところを触るとベリベリと剥がれた。


 俺の顔は青ざめていたと思う。壊してしまった。誰だか知らないけど人にもらったものなのに。プラスチックの球体を拾い上げ、紙も拾い集める。すると目に止まるものがあった。小さな文字だった。アルファベットと数字。製造に必要な番号だかなんだかかとも考えたが、そんな番号を手書きで書くだろうか。しかも幼い子が書いたような…。

 まさか。はっとした。バラバラになった紙を世界地図になるように、順番に組み合わせる。そこに見えたのは住所だった。日本のじゃない、外国の。オーストラリアだった。

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