第2話 過去探し
帰宅すると姉が文句垂れていた。
「自分の部屋なのに私に任せて外に出ていくとか、ありえなくない? 普通は出てってって言われてもやっぱりやりますってなるよね。私は召使か何か? ほんとにありえないんだけど。」
あんなに怒ってて出てろとか言われたらそりゃ出るだろ…とも思ったが、この状態の姉に何を言っても仕方がない。
「ごめん。ありがとう。」
わかればいいのよ、と姉はすぐにおさまった。
自分の部屋とは思えないほどに綺麗にされてしまった部屋に戻り、俺はまたも地球儀を眺める。そもそも何で地球儀なのか…。
晩ご飯を食べ、風呂に入り、ベッドに入る。その一連の流れの中でずっと考え、引っ掛かりを覚えつつも何も思い出せなかった俺は仕方がなく小中の友達何人かに頼ることにした。
「地球儀好きなやつ? 地理好きなやつも特にいなかっただろ。」
「そもそも本当にそれ同じ小中のやつなの?」
返答は様々だったが、だいたいこんな感じ。どいつもこいつも特に知らないとのことだった。
だが最後の一人が他とは違う対応をした。
「ボールって…じゃあボールとして使ってみたらいいんじゃね?」
なめてんのか。馬鹿にしてんのか。いろいろ聞いてみても地球儀を渡してくれた人間の正体がわからない。そんな時にこんな適当な提案をされたら投げやりにもなる。どうせわかりっこない。しかも地球儀なんて使わない。だったらもういっそのことボールとして使ってやるか。
人間、行き詰まると何をしだすかわかったものじゃない。俺はその時もう何も思いつかなかったから、ボールとして使ってみることにした。地球儀を蹴り始める。当然、地球儀の用途はボールではないからうまく扱えるわけがない。壁や天井にガンガンぶつかった。隣の部屋にいる姉からの怒号が聞こえた。もう、どうでもよかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます