第7話 女の子サイコー
次女は、長女と2つ違い。
2歳差の兄弟はちょうどいいかな、と思って生んだけど、これが、結構間違いだったかも、と気が付くまでそんなに時間はかからなかった。
幼稚園と言えば、大体3年保育だから、3歳になったら、幼稚園に入る。これが、3歳差なら、卒園した、はい、制服はお下がり、ってできるけど、2歳差だと、また、新しい制服を買わないといけない。これが結構バカにならない。入園、入学はとにかくお金がかかる。新しい制服、新しい体操服、通園バック、帽子。幼稚園で既にこんなにお金がかかるのか、と少し、よろけそうになるけど、子供を二人も生んだから、結構がっしりしてる。倒れない。倒れている場合じゃない。
うちは普段のお洋服等のお下がりはやったけど、制服を始めとして学校用品に関しては、全て、新品を次女にも与えた。だって、酷いじゃない?ただ単に一番に生まれなかったからって、それだけでお下がりなんて。
私は次女には、長女とはまた違った、特別な感情を持っている。
普通、一番最初の子は、大事に、大事にされて、親も慎重に手探りで子育てをする。
何もかもが初めてで、新鮮で。反抗期中の憎たらしい長女だけど、彼女を育ててきた今日までのこの日の事で忘れたことは、一つも無い。生まれた日、立った日、走った日、幼稚園の最初の日、その他もろもろ、まるで頭の中に彼女の映画しか上映しない映画館があるかのように、全て、覚えている。
でも、次女は、覚えていない・・・。
実は生まれたその日すら、うろ覚えなのだ。生まれた日に、旦那が
「徳光さんに似てる」
と言ったのはしっかり覚えている。
だけど、それ以降、退院した日はどんなだったか、初めての離乳食の様子はどんなだったか、初めて立ったのはいつだったっけ??
酷い。
しかし、こんな事もあろうかと、私は子供二人が生まれてから、3歳になるまでほぼ、毎日記録を残している。でも、この記録でさえ、次女の分は飛び飛び、さぼったりしている・・・。
酷い。
第二子ってこんな扱いなんだろうか?うちの旦那は第2子だけど、長男だったから、第一子であるお姉さんより、今も昔も随分、はっきり分かるくらい大事にされている。お姉さんが気の毒になるほど・・・・長男至上主義なのかな?
そんな次女、に対する私の特別な思いは複雑だ。
次女は私にそっくりだ。
真っ黒な髪、丸い顔、毛深いところ、子供の頃のヒョロヒョロとした感じ。あまり、可愛い部類に入らない顔のつくり。チマチマと文章を書くのが好きなところ、少女漫画が好きなところ、本が好きなところ、運動神経がいいところ、でも、運動は嫌いなところ。ずるいところ。
DNAって凄い、って理屈抜きに思える。彼女を見ていると。
少しでも私に似ないようにと、髪を長くした。可愛いゴムで結んだり、ピンでとめたり。服も可愛いのを選んで着せた。ほめて、かわいいね、かわいいね、って頬ずりして育ててきた。旦那も可愛い、かわいい、って、きっと彼は心から思って、言ってる。
でも、私は違う。
私にそっくりで辛い。
彼女を見てると、子供の頃嫌だった事をもう一度、見せられているような気がする。
彼女の毛深い手足を見るたびに、胸が張り裂けそうになる。クラスの男子に
「毛深いね」
って言われた、って全く気にかける様子もなく話してきた時には、私が泣きそうになった。誰かが、私の背中を急にぎゅううっと物凄い力で引っ張って、40年前の教室に連れていかれたような錯覚に陥った。
次女が長い髪の毛を突然、ショートカットに切ってきた時は、彼女の顔をまともに見られなかった。一緒に美容院に行った旦那を責めた。
「何で、あんな頭にするの、絶対にショートカットだけはやめて、って言ったでしょ!、短くても絶対におかっぱ頭にしてって言ったでしょ」
旦那も次女も訳の分からない、という態度だったけど、私には到底受け入れられない姿だった。
そこに、小学生の私が立っていた。
いっつもハイソックスを履いて、なるべく足を隠していた私。
暗い顔の母を眺めている私。
あんまり友達がいなかった私。
父と母がこの世からいなくなればいいと密かに願っていた私。
髪の毛が短すぎて、全然可愛くなかった私。
妊娠した時、絶対に男の子がいい、と強く願った。私が、女の子として生まれて、大変だった事、辛かったことが多かったからかもしれない。子供時代なんて、女の子でいい事なんて一つもなかった。女の子なんだから、食器を片付けなさい、女の子なんだから手伝いはして当たり前、女の子なんだから、そんなにうるさくするな、女の子なんだから、オンナなんだから・・・・・勝手に女に生んだくせに・・・・・・・
なのに、女の子が二人。
神様って残酷なのね。
また、味わえって。
女の子の親は、女親にはキツイ。自分をもう一回眺める感じ。子供は自分とは違う人間で、全く違う人だと頭ではわかっていても、次女を見ると何だか苦しい。
でも、子供達には女の子として生まれて良かった、子供は絶対に女の子が欲しい、って思ってもらえるように、そして、あの頃の私がしてほしかった事を全部、全部、一つもこぼさない様に慎重に、丁寧に、今、私は娘たちに、している。1日も下を見る日がない様に。
子供たちが将来もし、女の子を産んだ時、
女の子ってサイコーだよ、ママ。
って言ってくれるように。
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