第4話 あんた





子供がいるお母さんが子供を旦那に預けて夜に出歩くとか、良くないと思っている人、多いでしょう。


私もそう思う。凄く思う。だって、そういう風に育てられたし、うちのお母さんは夜は必ず、いや、夜以外も

「ただいまー」

と帰ると大体居た。そして、おやつも必ずあった。


でも、私はお母さんになっても随分出かけている。私のお母さんに見つからないように、出くわさないように。アラフィフなのに、びくびくしながら。


でも、うちの旦那は全く気にしない。そして、子供も全然気にしていない。

「ママー」

なんて泣いたりもしないし、後を追いかけてきたりもしない。

でも、旦那が出かけると大騒ぎ。

「何時に帰ってくる?」

「どこに行くの、誰と行くの?」

物凄い大事件なんだ。


だから、私は気楽に出かける。と言っても、そんなにお酒は飲まないし(これを言うと、多くの人がビックリする。そして、「いや、飲むでしょ?」って言う。)、何しろ、友達が居ない。

私の友達は、旦那、20年以上友達の女子(未婚)の基本二人しかいない。しかも、旦那は友達だけど、旦那で、家族だから、別に、出かけよう!と気負わなくてもいつも出掛けてる。

では、貴重なもう一人は?と言うとアラフィフの独身女は年間のスケジュールがほぼ埋まっている。お金もあるし、休暇もいっぱいあるから。スケジュールが埋まっていないのも、不安、なんだそうです。優雅なんだか、寂しいんだか、よくわからん。

ならば、誰と出かけるのか。




オトコ。




旦那以外の男。



だから、近所には出かけない。


一度、旦那の同僚に一緒に居るところを見られた。同僚は、何事も無かったかのように会釈してた。

でも、旦那には言っていなかった。




周りも不倫だと思う男。

外見の綺麗な男。

と、ぴったりくっついて、外を歩く。

私を愛して止まない男。









オンナの心をもった男。

男の旦那がいる男。






「昔、どうしても認めたくなくて、告白してきた物凄く可愛い女の子と付き合ったの。」


だって、あんた、恰好いいから。あんたの外見を見て好きになったんでしょ。


「頑張って、付き合ったよ。一緒に出掛けたりしてさ。」

「でも、部屋でそういう雰囲気になったの。彼女、服とか脱ぎだしちゃって。今思うと、積極的だよね。」



「こっちも一応、上半身とか裸になってさ。







で、













彼女のおっぱいが目の前に来たの。」









「もーさ、わーーーーーーってなって。やっぱり無理、無理、無理。怖い!って。」




そいで?




「彼女、泣いて帰っちゃったの。」





「きっと、後で、こっちがゲイだって知ったと思うけど、可愛そうで、悪くて。傷つけたと思って。もう、絶対に女の子と付き合ったりしない、自分は、男が好きなんだって思ったの。」






へー。








こんな話をする男と出かけるの。




食事に行ったり、ゲイバーに行ったり。

今、私の中で一番しっくりくる人。

誰よりも女で、誰よりも旦那を愛してて、でも、所謂、女みたいに色んな事に嫉妬したり、ぐちゃぐちゃいつまでも言わないし、買い物も早い。





買い物の早い女は好き。

女の買い物は、長い。






二人で何だかわかんないお酒を飲む。

しこたま飲む。ゲイバーに行って、男を物色する。キャーキャー騒ぐ。がタイがデカいから、こっちが少々ふらついても大丈夫。

お互いの旦那の自慢をする。そして、このオトコがうちの旦那をキュートだと思っている事も知ってる。うちの旦那も知ってる。自分の友達が自分の旦那を気に入ってるなんて、女同士ならあり得ないし、耐えられないかもね。





こないだ、あんた、新宿駅で私に言ったよね。







「あんた、オトコが好きで、ラッキーだね」





何言ってんの?









「ストレートでラッキーだって言ってんの」
















「ゲイって大変なんだから」












わたしは、あんたがあんたで、ラッキー。







また、行こう。








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