十五 魔眼の果て
「ここは?」
「私が呼んだのです」
一郎の目の前には管理者であるお母さんが立っていた。
「これは、お久し振りです」
一郎はお辞儀する。
「そんな事よりも、今はその目です。駄目じゃないですか。そんな力におぼれてしまっては」
お母さんがめっという言葉を付け足す。
「お母さん。そんな事を言う為にわざわざ呼んだのですか?」
「だって、一郎が暴走気味だったから」
一郎はお母さんの目をじっと見つめる。
「呼んでしまったら駄目でしょう。俺がここで魔眼を使ったら、この世界が俺の物になったりして」
一郎は言ってから、魔眼発動。と呟く。
「一郎。おいたしちゃ駄目でしょ?」
お母さんが優しくたしなめる。
「効かないの?」
「ええ。もう、解析は終わっています。その魔眼はこの世界ではもう効力を持ちませんよ」
「なんだよ。あーあ。短い夢だったな」
一郎は溜息を吐く。
「本気ですか?」
「さあ。でも誰にだってそういう気持ちってあるでしょう?」
一郎はそう言って、お母さんを見つめる。
「そうですね。けれど、そういう力を手に入れる事ができても、手に入れられるかも知れないと思っても、手に入れたり、使ったりしてはいけません。皆が同じルールの中で遊んでいるからこそのゲームなのです。そういう約束を破って、遊ぶ相手がいなくなったら、オンラインゲームの存在自体が危うくなってしまう。どんなゲームだとしても、マルチプレイである以上、相手の事も尊重しなくてはならないのです。それがたとえ、殺し合う内容のゲームだとしても」
「確かに、そうですね。相手がいなければゲームは成り立たない。どんな内容のゲームだとしても、それが相手がいてこそのゲームだという事を忘れてはいけない。だからこそ楽しめるているという事も」
「その通りです。そういう気持ちを常に持ってプレイしてもらえると嬉しいです」
一郎の周囲の景色が歪む。
「ジャベリン。戻ったにゃ?」
「ああ。戻った。けど魔眼は消えちまった」
一郎は遠くを見るような目をして言う。
「ジャベリンは、本当にあんな物が必要なのにゃ?」
ミーケが一郎の胸に飛び込んで来る。
「旦那様。ミーケさんばっかりずるいのです」
ガオガブが一郎に抱き付く。
「うーん。魔眼なんかより、こっちの方がいいか」
一郎はミーケとガオガブの頭を撫でながらしみじみと言った。
一郎達の戦いはとりあえずここまでです。ここまで読んで頂いて本当にありがとうございました!!
大妄想ジャベリン ~電脳世界で管理者にチート能力を与えられたけれど、あまりやる気もないので適当に戦っています~ @itatata
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