8ー2

 渉もタイムを測って、2人は羽間刑事のところに行く。

 「渉がやった場合のタイムはどうですか?」

 羽間刑事が2人にストップウオッチのタイムを見せた。

 「渉でこのタイム。私がやった時のタイムがこれ」

 綾はタイムをメモっていた紙をポケットから出して羽間刑事と渉にも見した。メモを見ながら綾が軽く説明をした。

 「これが私。フェンスのネジを緩めるのにかかる時間がこれくらい。これを女子がやったらこれくらいの時間がかかるわね。さらに渉が屋上に戻ってきた時間はこれね」

 「あれ? ストップウォッチって1つだけだよね。俺が測っていたから」

 「それは綾が持っていたから。家からもう1つ持ってきて実験するのに2つのストップウォッチが必要だったので」

 「なるほどね……」

 「それでこっちが渉。フェンスのネジを緩めるのにかかる時間がこれくらい。男子はこれくらいと見て、私が屋上に戻って来た時間がこれくらい」

 綾は紙を見ながら実験の結果を2人に伝えている。

 実験で使われたストップウォッチは実は1つではなかった。綾が家から持って来たストップウォッチもあったので実際は2つ。1つはフェンスのネジを緩めるのにかかる時間を。持つ1つは、屋上から姿を消した人が戻って来るのにかかる時間帯を測りながらフェンスのネジを緩めるのが出来るのか見ていた。これを2人で考え、やってみたい実験だった。

 紙を見ながらさらに話を進めていく。

 「これを見ると男女関係なく十分に細工する余裕があるなぁ」

 「そうね。あの時は、段ボール箱を持っての移動。それと職員室に鍵を借に行く時間がプラスされてもさほど差はないから余裕があるわ。それに私達がいないときなら、かなりの余裕で作業はできる」

 綾と渉はタイムを確認しながら話をした。例え、あの時の事を踏まえてもフェンスに細工をするだけの時間に余裕がある事を確認できた。

 「これで確認することが終わったわ。あの羽間刑事」

 「なんだい?」

 「「羽間刑事ありがとうございました」」

 綾と渉は羽間刑事にお礼を言った。

 「いいよ。少しは役に立てたかな?」

 「はい。これで新しい発見がありましたから」

 「そうか、それなら良かった」

 「もう、終わったのかい?」

 「はい。野上刑事もありがとうございました。お陰で助かりました」

 「俺はなにもしていないぞ?」

 「いいえ。ねぇ、渉」

 「うん。野上刑事と羽間刑事が屋上の中に入る許可をくださったお陰で綾と一緒に調べたいことを調べる時間ができました。だから」

 「「ありがとうございます」」

 「そっか~。そこまで言ってくれると嬉しいよ。2人供、頑張りなぁ」

 「「はい」」

 綾と渉はお互いに頷いた。

 「そろそろ戻っても大丈夫よね、渉」

 「そうだな。今度は竹村先生のところに行かないと」

 「そうね」

 綾と渉は自分達が持ってきた道具を片付けて、フェンスのネジも羽間刑事にちゃんと閉まっているのか、確認してもらい、もう一度2人の刑事を見た。

 「ありがとうございました、羽間刑事。野上刑事」

 「お二人のお陰で助かりました」

 「いいよ。頑張ってね、2人とも。滝森先輩によろしく」

 「頑張りなぁ」

 「「はい」」

 2人は羽間刑事と野上刑事に挨拶をして屋上から職員室に向かった。





 会議が終わる頃に職員室へ行き、2人は竹村先生に論文についていくつか、質問したり聞いてみたりして話を聞き終わると自宅に帰って来た。

 2人が学校から帰って来るとそこには2人の刑事がいた。

 「よっ、2人供! 待っていたぜ!」

 「こんにちは、綾さん、渉君」

 「「こんにちは」」

 これから5人で話し合いになった。

 刑事の2人もいろいろ調べていたが何もてかがりになるものは、なかったらしい。

 「2人の方はどうだい。今日は学校に行って来たのだろう?」

 「はい。竹村先生にもう一度、話を聞いてみたり、綾と一緒に論文について調べたりしました」

 「それに私と渉で屋上でちょっとした調べものが出来たのでそれは良かったかなと思います」

 「屋上で調べものですか?」

 「はい」

 「それは?」

 大人3人が綾の言葉に不思議そうな顔をしていた。綾は簡単に説明をした。

 「屋上で羽間刑事と野上刑事にお願いしてちょっとした実験をして来ました」

 「実験?」

 「はい。実験と言ってもあの時、私と渉が放課後屋上にいたのは知っていると思います。そして4人で屋上のフェンスに電動のドライバーでネジが取れるのか実験したのを覚えていると思います。そこで」

 「あの時の放課後、俺と綾が屋上で天文部の夜活動の準備を手伝った時の事を再現してみようと思いました。人数が限りあったので全部とはいきませんがやってみました」

 「何をやったんだい、綾、渉?」

 「準備をしているときに途中で道具が足りなくなってその場から離れたときに屋上のフェンスに細工が出来るのかどうかを調べてみました。誰もいなくなってからの行動ができるのは当たり前と考えた上での行動です」

 「まぁ、そうだよな。誰もいないときは時間に余裕があるから細工するの余裕の気持ちで作業が出来るしなぁ」

 「はい。だから俺と綾がその場から離れた時=若葉さんが俺と綾が知らない間に移動したとき、つまり誰もいなかったときに作業が出来るか時間を測ってきました」

 「それでどうなった?」


 

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