8
捜査五日目。次の日。綾は渉と一緒に学校に向かっていた。
「あら、あやっぺ!」
「春奈!」
学校に向かう中で綾のクラスメイトの春奈にあった。春奈の手には、ビニール袋を持っていた。買い物の帰りかなと綾は思った。
「春奈、こんなところで偶然ね」
「ほんと。あやっぺ、どこかに行くの。渉君と2人で?」
「うん。学校に忘れ物をしてね」
「それを取りに行くの?」
「うん」
綾は嘘をついた。2人の行動は、他の人には内緒なのだから。
「ねぇ、あやっぺ」
「な~に、春奈?」
「こんな事を言いたくないけど……」
春奈は綾に何か伝えたい事があるみたいだ。
「あやっぺ。あやっぺは今、天文部に見学しているんだよね?」
「うん、そうだよ」
「ねぇ、あやっぺ。あやっぺにこんな事を言っていいのか分からないけど、天文部やめた方がいいよ」
「春奈?」
春奈が不安そうに綾を見た。
「どうしたの、春奈?」
「渉君しかいないこら言うけど……最近、学校で先輩2人、亡くなったじゃん」
「うん、そうだね……」
「しかもその先輩って天文部、なんだよね? 最近じゃあ天文部って呪われているかもしれないって影で思っている人がたくさんいるみたい」
「そうなの?」
「うん。あやっぺは今、天文部に見学しているって言っていたし……なんか心配なの。雫も天文部だったし、次はあやっぺか若菜だったら嫌だよ、あやっぺ……」
春奈は相当ショックあるいは不安があり、綾達の事を心配しているみたいだ。
綾は春奈がここまで心配していた事に驚きと嬉しさが込み上げて一度、抱き寄せて『大丈夫』と背中を小さい子供をあやすようにポンポンと叩いて春奈から離れた。
「大丈夫よ、春奈。私なら」
「でも!」
「大丈夫よ、私見学者だし、ね」
「それでも心配よ!」
「心配してくれてありがとう、春奈。春奈が友達で良かったと思う」
「あやっぺ……」
綾は春奈に近づいて春奈の両手を握って春奈が安心できるようにニコッと微笑んだ。
「きっと警察が事件を解決してくれるよ。それまでは気を付けるよ。ありがとう、春奈」
「うん。ほんと気を付けてね。もう、と友達が消えちゃうのは、嫌だから」
「うん」
いつも明るい春奈が相当、今回の事件が怖く感じている事を綾は分かった。春奈の前じゃあ言えないけど早く事件を解決したいと綾と話を聞いていた渉も思っていた。
「じゃあもう行くね、春奈」
「うん。引き止めてごめんね」
「ううん、いいよ。ほんとありがとう。心配してくれて」
「うん」
綾と渉は春奈と別れて学校に向かった。
春奈に渉との会話が聞こえないと思われるところに来ると綾は渉を見た。
「渉。早く事件を解決できるように頑張ろう」
「そうだね、姉さん」
2人の思いは一緒だった。
***
2人は学校に着くと天文部の顧問である竹村先生から第2理科室の鍵を借りて第2理科室に来ていた。
綾と渉は理科室の準備室に入って天文部が使っている棚へ行った。そこには A、B、Cと言った番号が書いてあった。
「確か、Aが1番古いはずだっけ、綾?」
「そうみたい。私たちの年代は、Eの棚って先生は言っていたわね」
2人はここに来る前に竹村先生から論文の置いてある場所などを聞いていた。
先生によるとAの棚から古い順らしく、綾が確認したい論文を見せた時に先生は、それはEの棚にあると言っていたのだ。
「あっ、これじゃあねぇ~綾?」
「どれ?」
渉の方が先に見つけて綾に見せた。
「……これだね」
渉が見つけた論文を自分が持っている原文と比較して、間違いがないことを確認して綾が答えた。
2人は論文を早速確認してみた。2人は論文の名前が書いてあるところを確認してみた。
「「!」」
2人は驚いた。
昨日、原文の方で名前を見つけて確認しに来た2人。コピーされていた論文には、名前が消される前の名前がしっかりと映っていた。
綾が今、手元に持っている
「ねぇ、渉。これって……」
「竹村先生がコピーしたって言っていたよな、綾」
「確か……そうね」
「先生のところに行っていつコピーしたのか聞いてみよう、綾」
「そうね。でも、今の時間は会議中だから少し待ってから行こう、渉。あと一ヶ所、行きたいところがあるし」
「分かった」
2人は竹村先生と話が出来る時間までまずは綾が言っていた行きたい場所へ向かった。綾が行きたい場所とは、屋上だった。
2人は屋上へ行った。屋上には2人の刑事さんがいて、1人が綾と渉の知っている刑事さんだった。その刑事は羽間刑事だった。
羽間刑事も綾と渉に気づいたらしく声をかけてきた。
「綾ちゃんに渉君だね」
「「!」」
2人も羽間刑事の姿を見てほっと一息ついた。少なくとも綾と渉が知らない人ではないことに。
羽間刑事は学校で起こった転落事件の時に出会った刑事さんだ。2人の父、蓮の高校時代の後輩にあたる人だ。
「「こんにちは、羽間刑事」」
「こんにちは。どうしたのこんなところに?」
「おい、羽間。知っている子かい?」
「あっ、はい。自分の高校時代の先輩のお子さんなんです。ここの生徒が転落した時に偶然にも、高校時代の先輩のお子さんだって始めて知ったんですよ」
「へぇ~それはすごい偶然だな。名前を聞いても構わないか?」
「あっ、大丈夫ですよ。いいよね?」
「「あっ、どうぞ」」
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