7ー2
「それは……まだ、分かりませんが和志先輩、アズサ先輩の2人は少なくとも雫と何か……係わっていたのではと私は思います」
綾は落ち着いた声で話した。
「何かこれと思うものでもあるのかい、綾ちゃん」
簾堂は綾に質問してきた。綾は自分の膝あたりにずっと持っていた論文をテーブルの上に置いた。
「これは?」
「天文部の論文です。私と渉は、今回自殺してしまった雫と繋ぐ物だと思っています。この論文が鍵かもしれないと思っています」
「繋ぐ……物」
綾が簡単に説明をした。
「この論文を書いた人物は部長の藤村先輩となっています」
「あっ、名前がありますね」
「けど、これを書いたのは部長ではなく、違う人です」
「違う人? じゃあ、誰が?」
「それがまだ、分からないです。名前が消されていて見えるか、見えないかの
綾は名前が書いてあるところを指でさしてみんなに見せた。
「ほんとだ。綾ちゃんの言う通り、確かに消したあとがある」
「論文を書いたら必ず名前を書くのが天文部の決まりなんです。天文部全員が書くので誰が書いたか分かるように。この論文を本当に書いた人が分かれば……」
「今までの事を繋ぐ意図が見えてくるという事かい、綾」
「はい。明日は休みなのでもう一度、学校に行って調べてみようと思います。手伝ってね、渉」
「いいよ、綾」
「分かった。また、明日ここに来る。もしかしたら、次の犯人の行動を止める事が出来るかもしれないし」
「はい。これ以上、殺人は起きてほしくないです」
「そうですね」
今日の話し合いはここまでとなった。2人の刑事は事務所を出ていった。
刑事が出ていった後に綾はソファーのところで論文を見ていた。
渉と蓮は2人で話し込んでいた。
論文を見ていた綾はふっとなにか思いついたのか、鉛筆を父の机から持ってくると名前が書いてある方ではなく、反対の名前を消した方を軽くこすってみた。ボールペンで名前を書かれたと思わせる跡だったので最後まで、軽くこすってみるとそこには、ある人物の名前が浮かんできた。
綾はそれを急いで渉と蓮に見せた。綾を始め2人も驚いた表情を見せた。
その後、綾と渉そして蓮の3人でいろいろ話し合っていた。
***
数時間後にまた、簾堂と箕上の2人の刑事が探偵事務所に戻ってきたのだ。何か調べていたものが分かったのか、何か情報を持ってきたみたいだ。
「すまんな、また来る羽目になって」
「別に構わないさ。でも、何か情報を持ってきたんだろう?」
「もちろんさ」
もう一度、2人の刑事と親子で話し合いが始まろうとしていた。
「お父さん、外の看板を本日の営業終了にしてくるね」
「ありがとう、綾。渉、綾だけじゃあ大変だから手伝ってあげなさい」
「はい」
2人は一度、外に置いてある看板と入口に飾ってある看板をどちらも本日の営業終了とかえて、2人は事務所に戻った。
2人が戻らるとそこには、母親が入れてくれた紅茶があった。
「二人共、早く温かいものを飲んで温まりなさい」
「ありがとう、お母さん」
「ありがとう、母さん」
「さて、綾ちゃんと渉君が戻って来た事だし話すか」
「「お願いします」」
綾と渉が戻ってきたので簾堂は自分たちが調べてきた事を話し始めた。
それを聞いた綾と渉は信じられないと思いたかった。けど、まずは綾が気になっている論文について明日、学校で確認することを決めた。
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