7-1
「これで全員ですか、先生?」
「はい、そうです」
「分かりました。集まって頂きありがとうございます。皆さんはもう朝の連絡で知っていると思いますが熊倉アズサさんが亡くなりました。熊倉さんは天文部に入部していたという事でお話を聞かせて頂きたいと思います」
「僕達ですか」
「はい」
「何でですか?」
「熊倉さんが亡くなったのが夕方から夜にかけてだと分かったからです」
「「「「「!!! 」」」」」
部長の質問に警察の人が答えてくれた。その言葉にその場にいる全員が言葉を呑んだ。
綾だけはアズサが亡くなったことを知った瞬間に天文部の人達が呼ばれるだろうと何となく分かっていたからそんなに驚いてはいなかった。逆にみんなの様子を見ていた。
「話して欲しいと言われても……」
「何かあるんですか?」
「いいえ。昨日は部活が終わった後にみんなでここを出ましたから」
「アズサちゃんが最後まで残っていました。和志君が亡くなってからずっと部活が終わっても1人で最後まで残っているんです」
「そうですか。一応、1人ずつお話を聞かせて頂きたいです。先生、いいですか?」
「はい。ご協力します」
その後は、教室を2箇所使って警察の人に1人ずつ話をした。話し終わった人から帰宅して行った。
午後。学校が午前中で終わったてしまったので午後に簾堂と箕上刑事が事務所にやって来た。
今朝、学校で死体が発見された。またも天文部の生徒。その事は、綾より早く帰って来た渉が父、蓮にも伝えてあるのでもちろん蓮も2人の刑事が来ても要件は分かっていた。
蓮が2人を事務所の中に入れて移動するとソファーには綾と渉が座っていた。
「綾、渉。秋於に箕上刑事が来た」
「来たぞ~」
「こんにちは」
「「こんにちは~」」
メンバーが揃ったところで今朝、学校で起きた事件について詳しい内容が2人の刑事によって説明された。
「被害者は熊倉アズサさん。高校2年生。アズサさんが亡くなって24時間が経っていました。アズサさんは夜の7時頃に殺害されたと考えております。そしてアズサさんは、犯人と争ったあとはありませんでした」
「おそらく彼女は、犯人と顔なじみで警戒をしていなかった。まずは、睡眠薬で気絶させられ、意識がない時に犯人によって運び込まれ体育館から首に縄をかけた状態で吊り下げられたと考えている」
「体育館のどこだ?」
「2階です。2階から吊り下げられ、絶対に足が届かないようになっていました」
「酷いものだ。犯人の恨みを感じるよ。彼女にトラブルは?」
「ない。全然ない」
「無くっても実際に殺害されてしまった」
「そうだ。しかも今回は殺人だ」
「綾と渉の前ではあまり言いたくないが天文部の生徒達のアリバイは、もちろん聞いたのだろう?」
「もちろん、聞いたさ」
「どうだった?」
蓮は信じたくない事だが天文部の生徒全員分のアリバイを簾堂に聞いてみた。
聞かれた簾堂は自分の手帳を見ながら話を始めた。
「全員、彼女が殺害されたと思われる時間帯はみんな家にいた。けど2人だけはその時間帯にいなかった事が後から分かった」
「後から? 簾堂さん、誰ですか?」
「部長と若菜という生徒だ」
「えっ!」
「秋於。後から分かったってなんだ?」
「でまかせだ」
「「「!」」」
「どういう事だ?」
「嘘をついていたんです」
「嘘ですか、箕上さん」
「はい。始めは2人とも家にいたと言っていましたが、調べてみると家にはいなかったという事が分かりました」
「一応、アリバイを確認したんだな、秋於」
「それはそうだ」
綾と渉は黙って話を聞いていた。
「若菜さんは塾。部長さんは友達の家に行っていた事が分かりました」
「じゃあ何で若菜さんと先輩は嘘をついたんだ? それにどうやって2人が嘘をついているって分かったんですか?」
渉の質問に簾堂と箕上が答えた。
「俺が若菜という少女の通っている塾に行き、箕上は藤村という少年の行動を調べた。若菜という少女はその日は塾はお休みで、藤村は友達の家に来てはどこかに行ったと」
「それじゃあ、なんで嘘を? 本当のことを言った方がいいのに?」
「渉もそう思えるよね」
「あぁ」
「何か嘘をつかないといけない事でもあったのか?」
「それが分れば苦労はないだろう、蓮」
「その通りだな。分かっていればここには来ないか」
「そうだよ。もう少し詳しく調べてみるが」
「そうしてくれ」
「はいはい、分かった」
2人の会話を見ていた綾と渉はそれぞれ自分の考えをまとめていた。そして蓮は自分の子供達に話を振った。
「どう思う、綾、渉」
蓮は綾と渉に話しかけた。自分たちの考えや疑問を言ってみなさいと。まずは綾の方から質問を始めた。
「あの、和志先輩の時と同じ手紙はありましたか?」
「いいえ、今回はなかったです」
「そうですか……」
「やっぽりあの手紙が殺していく順番だったりするのか?」
「その可能性とあるが、なぜ今回はなかった?」
「今回は必要なかったとしたら……」
「どういう事だい、綾ちゃん?」
「簾堂さんが言ってようにアズサ先輩は犯人と顔なじみで、犯人はアズサ先輩の行動をよく知っていたと思います」
「行動ですか?」
「はい。最近のアズサ先輩は、和志先輩が亡くなってしまった事を自分のせいだと思い込み、アズサ先輩はいつも部活が終わっても最後1人で理科室に残っている事を知っていたということです」
「そこを犯人は狙い目だと思い、手紙を用意しないでいきなりの計画でやったという事か、綾」
「いきなりかは分からないけど……でも、アズサ先輩を狙っていたのは確かだと思うよ、渉」
「でも、どうして彼女が?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます