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 渉と簾堂の2人が事務所に戻っていると思われる中、雫の家で家族に挨拶をしてからすぐに雫の家をあとにしていた。

 雫が亡くなってから1週間たつかもしれないが、家族の姿を見ているのがとても辛く、時間が長く感じていた。

 ブーー、ブーーと誰かの携帯のマナーモードにしている時のバイブオンが聞こえた。

 それは小雪が持っている携帯だった。小雪がメールを確認してから1年を見た。

 「明後日は夜の活動をします。夜の7時半に学校に集合です。場所は屋上でやります。活動はいつものと同じ」

 「屋上?」

 「綾ちゃんは始めてだから説明するわね。天文部は何回か、学校の許可で夜の活動を許されているの。その時に星の動きとか、いろいろ調べるの。参加できるなら学校に来てね。綾ちゃんは、見学者だから強制はしないって、部長からのメールなんだけど、どうする?」

 「せっかくなので参加させて頂きます」

 「良かった、全員参加ね。始めは雫ちゃんへの安らぎを願って、みんなで黙祷もくとうしてから活動するから」

 「「「はい」」」

 「あの、何か必要なものって、あるんですか?」

 「大丈夫よ。こっちで用意するから」

 「分かりました」

 「あとは、明日の部活はお休みです。明日は先生方の会議の日だから、以上。みんな気を付けて帰ってね」

 「「「はい」」」

 部長からのメールを小雪によって伝えられ、その場での解散となった。

 綾は星宮と一緒に帰って行く。小雪と冬真の2人とは帰る方向が違う為、今はいない。

 「綾さん、若菜さんと先輩から手紙の事、聞いてみました」

 「本当に! それでどうだった?」

 「貰ってないみたいです。若菜さんと先輩方も……」

 「そう……」

 「お役にたてず、すみません」

 「ううん。ありがとう、星宮さん」

 「はい」

 「あっ、ちょっと聞きたい事があるの、大丈夫かな?」

 「あっ、はい。私で分かる事なら」

 「ありがとう、助かります。論文って先輩しか書かないの?」

 「いいえ、天文部全員です。簡単なものでもいいから書くのが部の方針です」

 「論文を発表する時に使うのって、やっぱり先輩達が書いた論文なの?」

 「いいえ、発表に使うのは先生や部長に副部長で決めるのが多いです。たまに2年の先輩方も手伝っていますが」

 「そっか、ありがとう」

 「いいえ」

 「じゃあ、明後日の夜に」

 「はい」

 綾は星宮と途中で別れた。





 渉は綾が帰ってきたのを確認してから少し時間をおいてから、綾の部屋に向かった。渉は今日、簾堂刑事と郵便局に行き、そこで聞き込みをしてきた。

 まずは綾にその事を話す為に綾の部屋に来たのだ。

 「綾。今、大丈夫か?」

 「大丈夫よ。どうぞ」

 綾の許可を得たので渉は綾の部屋に入った。

 綾を机で論文を読んでいた。論文を借りてまだ、読み終わっていないと綾が言っていた事を思い出して、また後の方がいいかなと渉は思った。

 「論文を読んでいるのか?」

 「そう……あと少しで終わるの。それでそっちはどうだった?」

 綾が読みながら聞いてきたのでそのまま話す事にした。

 「読み通りだった。雫さんは、朝早く郵便局に来ていたみたいだ」

 「でも、朝早くって私達が通学する時間帯でしょう?」

 「そう」

 「まだ、その時間だと郵便局はよね?」

 「そう。でも丁度、雫さんと鉢合はちあわせした人の話が聞けた」

 「鉢合わせ?」

 綾は論文が読み終わったのか、眼鏡を外して机に置いて渉の方を見た。

 「雫さんと最後に会話した人と会って話を聞いた。その人の話だと自分が早番で朝、鍵を開けないといけないから早く出勤したみたいだ。その時に郵便ポストの前にいた雫さんと会ったって言っていた。その人は雫さんと同じマンションに住んでいる人だからお互いに顔を知っていたみたいで、雫さんが手紙を出すところだったから『預かってあげようか』って、雫さんに言ったみたいだ」

 「雫も知っている人……だからその人に預けたのね?」

 「そう、『特別に預かってあげる』って言ったみたいだ。ついでに急ぎなのか、聞いたみたいだ」

 「それで雫は?」

 「『急ぎではない』って答えたみたいだ」

 「そう……。それで手紙の宛先は?」

 「分からない……輪ゴムで止めてあって。でも、2通あったみたいだ」

 「2通……」

 「そう、2通」

 「じゃあ……やっぱり同じ部の星宮さんと若菜かな? 先輩方は除外しても大丈夫そうかな。でも……若菜は持っていないって言ったみたいだけど」

 「持っていない!」

 今度は綾が説明にはいる。

 「星宮さんが若菜に手紙の事、聞いてくれたの。そしたら『持っていない』と答えたみたい。先輩方も同じ」

 「じゃあ、あと1通は誰に?」

 「分からない。もう少し調べてみないと」

 「そうだな。論文の方はどうだ?」

 「あと少し……読み終わったわ」

 綾は途中まで読んでいたと思われる論文は、あと少しで読み終わるところで一度、読むのをやめた。

 けど、自分の報告のついでに論文を読むのを再開し今、読み終わった。

 綾は論文を閉じて渉にも分かるように論文を机からとって渉に渡した。

 綾から受け取った論文をしばらく眺めてから渉は綾に論文を返した。

 

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