5ー6

 「読んで見たけど、おかしいと思える内容じゃあないのよねぇ~」

 「じゃあ、部活というキーワードは違うのか?」

 「うーん……ん?」

 「どうした、綾?」

 「渉。こっちに来て」

 綾は考えながら論文の表紙や裏表紙を交互に返しながら見ていたら、おかしなところを発見した。それを見つけた綾は渉を呼んだ。

 「ここ見て!」

 渉に見てほしいところを指でさした。

 そこには、何か消した跡があった。

 「これってボールペンでも消せる消しゴムで消した跡ぽっいよね」

 「確かに」

 2人が見ていたところは裏表紙の右下のところだ。何か書いてあったと思われるところを消しゴムで消した跡があった。

 その部分だけが紙が少しすり減っているかのように見えて、綾が指で軽く触ってみると少しザラついていた。

 「……もしかして、これを書いた人の本当の名前が書いてあったのかもしれない」

 「本当の?」

 「そう。この論文には部長の名前があるけど、本当は別の人が書いた物で部長は名前を消して自分の物にした」

 「マジかよ!」

 「多分。それに……今、思うとこれを始めに小雪先輩が読んでいた時の『これって』という呟いた事にも納得いくわ。先輩は、どこかで見た事があったのよ。見た事がなければ『これって』と呟かないと思うの」

 「確かに知っていないと出てこない言葉だよな」

 「……これ、しばらく借りる事が出来ないかしら。出来ればこの原文を」

 「原文?」

 渉の一言に綾が説明する。

 「コピーしたのもあるみたい」

 「そういう事。綾の思った事がそうならコピーだと意味がない。だから原文を」

 「うん。だからこのまま借りるか、貰う事が出来れば」

 「証拠にするのか」

 「うん。一つでも多く持っていた方がいいでしょう」

 「確かに」

 「明日は部活が休みだから、どこかで部活を探して聞いてみるわ」

 「じゃあ、父さんのところに行こう、綾」

 「そうね」

 2人の捜査は少し前に進めたような結果になった。そして2人は今日の報告をする為、父親のところに行き、報告して1日が終わった。




 次の日の朝。渉が日直の為、綾一人で登校していた。1人で登校していたら、後ろから呼ばれたような気がして後ろを見た。

 そこにはある人物がいた。

 「おはよう、綾君」

 「あっ、おはようございます、藤村先輩」

 綾は偶然にも天文部の部長である藤村竜也にあった。綾の心の中でこれはチャンスだと思い、さっそく論文の話をした。

 「すみません、先輩。まだ、論文が読み終わっていないので、できたらしばらくお借りしても大丈夫ですか?」

 「それは大丈夫だ。綾君がしばらく借りていてもコピーしたのが準備室にあるから平気だよ」

 コピーしたものが準備室にあるのは知っているがここは、あえて知らないふり、始めて聞いたかのように振る舞った。

 「そうですか、良かった。私、読むのが遅いので私のせいで他の人が読めないと困ると思っていたので」

 「ごめん、僕の説明不足で。論文は先生にも読んでもらってから、発表の場で使う事が多い。そのため、自分の論文を書くのに他の人と少しでも、かぶらないように先生にお願いして、必ずコピーするようにしているんだよ。あとは他の人にも発表の場で使われた論文が読めるようにしてある」

 「そうなんですか」

 「うん。だから綾君がしばらく借りていても問題はない。しかし、綾君真面目なんだね。今は部の見学者なのにそこまでやってくれるなんて」

 「そんな事はないですよ」

 「そうかい? これはますます、綾君が天文部に入ってくれるといいなぁと期待してしまう。あっ、今日は部活休みだから。小雪から明日の夜の事は聞いているよね?」

 「はい、大丈夫です」

 「じゃあ、明日の夜に」

 綾は下駄箱のところで部長と別れた。綾は教室に向かって歩いて行った。

 教室に入ってからすぐに春奈が綾のあとから教室に入って来て、さっきの光景を見ていたのか、綾に近づいて驚きの声を出した。

 「ちょっとあやっぺ!」

 「あっ、おはよう春奈」

 「おはよう。じゃあなくって、今の何? 今の竜也先輩でしょう。なんで一緒にいたの!」

 「綾は今、天文部の見学に来ているのよ」

 「あっ、おはよう若菜」

 「おはよう、2人共」

 綾と春奈が話していると今、来たばかりなのか若菜が2人の後ろから話し掛けた。

 「そうなの! それにしても……いいなぁ~。あーあ、あたしも天文部に入れば良かったかなぁ~」

 「「全く、春奈は~」」

 「何よ、2人共」

 2人は春奈の行動をよく知っているので2人同時にため息が出た。

 そのあとは、先生が教室に入ってくるまで会話をしていた。





         ***



 「お帰り、綾」

 「ただいま、お父さん、渉」

 「何か分かった、綾?」

 「今日は部活が休みだから何も。ただ、あとで準備室にあるコピーしてある論文と原文を比べてみようと思うの」

 「確か綾が持っているのが、原文で学校にあるのがコピー。見比べてみれば何か見えてくるかもしれないなぁ」

 「そう思うよね、お父さん」

 「そうだな。やってみなさい」

 「はい」

 「まだ、ピースは集まりそうで集まらないところだ。焦らず2人のペースでやりなさい。真実は逃げたりしないから」

 「「はい」」

 「お帰り、綾」

 三人で会話をしていたら母親の声が聞こえた。後ろを見ると母親の姿があった。

 「ただいま、お母さん。夕飯作り、手伝うよ」

 「あら、ありがとう」

 母親が買い物から帰って来て、特にやることが今のところ何もなかった綾は、母親の手伝いをする事にした。

 「あっ、そうだ。あのね、お父さん、お母さん。明日の夜に学校に行かないといけないの。いいかな?」

 「いいわよ」

 「いいの!」

 「だってそれは今、綾と渉が解決しょうとしている事件に係わる事なのでしょう。だったらお母さんもお父さんも止めないわ」

 母は父から色々と話を聞いているみたいで素直に認められた。

 「渉。一緒に行ってあげなさい」

 「うん」

 「ありがとう」

 綾は制服から私服に着替える為に一度、自分の部屋に行った。私服に着替えた綾は母親の手伝いをする。

 渉は父と一緒にテレビを見ていた。

 事件が解けるまで、まだ係りそうだ。

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