4ー2
渉は星宮に手紙について質問をした。
「この手紙って、いつ来たんだ、星宮」
「16日です」
「つまり雫さんは15日に自殺している。そしてその2日前の13日にはもう、様子が変だった。それと13日に手紙を星宮さんに出したと考えられる。近所なら1日から2日もあれば手紙は届く」
蓮はある程度の仮説を考え、そして皆に話してみた。
「蓮の説明だと確かにその考えにたどり着いてもおかしくない」
「というと13日の前の12日と、あとの14日に何かがあったと考えていいわけだね、父さん」
「そうだな、渉。何か心当たりはないかな、星宮さん?」
星宮は少し考えてみたけど、何も思いつく事が見つからず申し訳なさそうに答えた。
「……思いつく事は……」
「そうか」
「星宮さんは天文部だよね」
「はい」
綾はふっと思った事を星宮に質問を始めた。
「雫が元気、いや、変だと思えたのって13日の金曜日だよね」
綾は携帯のカレンダーを見ながら曜日を確認した。それを踏まえて質問を続けていく。
「そうかもしれません……」
「14日の土曜日は、部活ってあったの?」
「はい、午前中だけありました」
「その時の雫は?」
星宮は少し考えてから答えた。
「元気がなかったです」
「ありがとう」
「どういう事だ、綾?」
渉が綾に質問をしてきた。綾は近くにあった紙に日付と曜日を書いて、それを見ながら自分の考えを説明した。
「渉も覚えていると思うけど……12日の木曜日の朝、私と渉は雫と会っているの。場所は学校の正門。その時の事を思い出して」
「12日の朝……あっ!」
「思い出した?」
「あぁ」
綾は一度、渉に思い出すように言って、渉が思い出した事を確認してから、さらに説明をしていく。
「12日の朝、雫は部活の先輩と一緒に天文部の論文の発表会に行った。その時に何かあったと私は思うの。あの時に私達が会った時には、雫はいつも通りに元気だったし。けど、次の日から」
「自殺まで追い込み、そして自殺してしまったという事かい、綾ちゃん」
「はい。多分、そうだと思います。手紙の方は13日の金曜日に出した。郵便局でもたくさんの仕事があれば、すぐに配達はできない。しかも14日、15日は、土日で郵便局はお休み。でも、配達ぐらいなら土曜日でも可能だと思います。だから星宮さんへ手紙が届いた日が16日になったと思う」
「すごい……」
星宮は綾の説明に思わず驚きの声変わりがでた。
「じゃあ、雫さんが自殺に追い込んでしまった原因は部活の中にあると考えているのか、綾?」
「多分、いや、あると思うよ、渉」
「部活にあるか……綾、渉」
「「はい」」
蓮は3人の会話、主に学校での出来事を聞きながら何か考えていたようだった。
『部活』というキーワードを聞いて、ある提案をしてきた。
「学校に答えがあるとしたら私達、大人はそう簡単に動けない」
「た、確かに。答えが部活にあると来たら余計にだ。一応、学校にも協力してもらっているけど、部活がキーワードという事ならちょっと難しいな。下手な事をすれば、雫さんを自殺まで追い込んでしまった犯人を警戒させてしまう。できれば、こっそりと調べたいもんだ」
「そうだろうな。下手に犯人が分かっても素直に話す保証はどこにもない」
「むしろ、自分は違うと言ってきそうだし」
「あの、私から聞く事はできませんか?」
星宮が大人2人の会話を聞いて捜査の協力を申し出た。
「いや、ありがたいがそれじゃ、逆効果になる可能性もある」
「そうですか……」
「どうしたらいいものか。なぁ~蓮、なんか知恵を貸してくれよ」
簾堂は困り果てて親友の蓮に頼んでみた。
綾と渉に任せてみるのは、どうだ?
「綾ちゃんと渉君にか。でもいいのか、2人に任せても?」
「2人には探偵の心得はもちろん知っている。それに大人である俺達が動くのが混乱だったら、子供達に協力をお願いするしかないだろう?」
「それもそうだが……」
蓮は綾と渉を見た。
「2人の答えは
「「条件?」」
「2つある。1つ目は、危ない事はしない。あと調べた結果は、必ず報告する事。2つ目は、最後の結末、あるいは、犯人がいると分かったら父さんと
「そうだな。雫さんを自殺に追い込んだ犯人がいて、最後に何をするか分からない。大人2人くらい、いた方が2人にとって安全だ。2人が調べた結果を蓮から聞けば、俺的には問題はない」
「そーいう事だ。いいね、綾、渉。今回は自分達でやってみなさい」
「「はい」」
蓮は改めて星宮を見た。
「星宮さん、今回の依頼は、綾と渉の2人で解決するでいいかな?」
「あっ、はい。大丈夫です」
「ありがとう。未熟なところがまだあるかもしれない2人だが、君の力になってくへれると思う。けど、星宮さん。これだけは守ってほしい。2人の事は、部活のみんなや周りの人には内緒でお願いするよ。バレると捜査に影響がでるから」
「分かりました」
「じゃあ、綾と渉は2人で星宮さんを送ってあげなさい」
「「はい」」
青森雫の件についての話し合いは、いったん終わった。
これからは、綾と渉の2人が青森雫の自殺の原因は、学校にあるのではないかと考えついた事により、2人は学校で調べるという事になった。
今回は学生という事で大人より双子の方が学校でいろいろ調べる事ができるので2人に任せられた。
綾と渉は星宮を家に送る為に準備をする。外はもう暗くなっており、安全に依頼者を送る為に蓮は、綾と渉の2人に任せたのだ。
「あの、ありがとうございます。依頼を受けて下さって」
「いいや、こっちも調べていた事だから。偶然にも同じ事を知りたいと願った者同士が集まっただけさ」
「あっ、はい」
「綾、渉、気を付けて星宮さんを送ってあげなさい」
「「はい、行って来ます」」
綾と渉そして星宮が事務所から出て行き、事務所の中には大人だけが残っていた。
「しかし、本当にあの双子は、ますますお前に似て探偵らしくなってきたのな。久しぶりに会ってビックリしたぞ」
「そうだろうな。今まで2人には、簡単な依頼をやらせていたからなぁ~」
「将来は探偵か?」
「分からない。けど、今はそうなのだと思う。2人が決めた事には、あえて口にはしないさ。例え、親でも」
「そうかい。けど、綾ちゃんの推理には驚いた」
「綾は頭脳。渉は体力。互いに自然とかばいあっているから、さすが双子だよ。まぁ~どっちも文武両道だから、個人としても能力が高いが」
「どっちにしろ、お前の子供達はすごいよ」
「そうだろう」
「……全くお前、相当な親バカになったよ」
「……そうか? いや、そうかもな」
親友同士の2人の会話はまだ続きそうだ。父親として2人には、自分と同じ仕事、探偵をやってもらいたいと思いが強く感じられる会話だ。
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