3
「やっぱり若菜ちゃん、休みだね」
「うん。顔色悪かったものね。本当に驚いたよね、あやっぺ」
「うん」
「私も途中で若菜ちゃんの様子を見て驚いたよ。一緒に学校に行こうかって、聞いたら1人で大丈夫なんて言うから、余計に心配したよ」
「だよね。1人で戻って来たときは驚いたよ。私とあやっぺが外でお昼なんて食べていなかったら、どうなっていた事か」
「ほんと。若菜も無理して1人で大丈夫なんて意地張らなければいいのに」
「まぁ、そこが若菜ちゃんらしいよ」
「そう?」
「「そうそう」」
今は休み時間。昨日、具合が悪かった若菜は今日お休みだ。今は、綾と春奈、そして雫の3人で話をしていた。
春奈と雫は、若菜とは付き合いが長いので若菜の性格をよく知っている。けど、綾はそうでもないので、2人よりは若菜とは付き合いが短いのだ。
「ねぇ、しーちゃん。昨日はどうだった?」
春奈が昨日の天文部の発表会について、雫に聞いてきた。
「えっ、……先輩の論文がすごかったよ」
「確か、天文部の部長って
「そ、そうだね」
「学校じゃあ、女子に人気があるっていう先輩でしょ。カッコいいよね!」
「そうなの?」
「あやっぺは興味ないの?」
「全然」
「もったいない。あやっぺだってすごく美人さんなのに恋愛には、ほぼ遠いなぁ~」
「悪ぅーございました」
「でも藤村先輩、カッコいいよね~。しーちゃんもそう思うでしょ」
「う、うん」
元気がない雫の声に綾と春奈が雫の事を見た。どうしたのかと。
「どうしたの、雫。なんか元気がないみたいだけど?」
「そ、そんな事はないよ。ただ……私もなんだか風邪気味みたいなの」
「しーちゃんも。無理しないでね」
「ありがとう、春奈ちゃん」
2人の会話を聞いていた綾は、何気に春奈に質問してみた。
「ところで春奈。私や雫には、ニックネームで呼ぶのにどうして若菜は普通なの?」
「あっ、私も言われてみれば不思議に思ったの。若菜ちゃんだけニックネームで呼ばれていないよね? 私と綾ちゃんは普通にニックネームで呼んでいるのに」
あれは~といいながら春奈が2人に説明を始めた。
「しーちゃんとあやっぺ、絶対に若菜本人の目の前で言わないでよ! 若菜は普通に呼ばないと怒るのよ。ニックネーム禁止って、言われたの。それで」
「始めて知った……」
「私も……ちなみに春奈ちゃん。若菜ちゃんの事、なんて呼んでみようと思ったの?」
「あっ、それは私も知りたい!」
綾も興味があって春奈に聞いてみる。春奈は、記憶をたどるかのように少し考えてから答えた。
「えーと、若ちゃん、わーちゃんとか、かな」
「案外に普通だよね」
「うん。そうだよ」
「確かに普通だね。それでも若菜ちゃんは嫌だったのね」
「そうかも。でも2人は、意外にも否定しなかったし、まぁいいのかなって」
「まぁ、慣れちゃったしね。そうでしょ、雫」
「うん」
この時、綾達は普通に会話をしていた。
綾には、雫が何か悩み事でもあるのかなと一瞬、思える
日曜日の朝。綾は少し遅めに起きた。学校はお休みだし、ゆっくりと起きてみた。
「おはよう。お父さん、お母さん」
「「おはよう、綾」」
「今日は俺の方が早いな、綾」
「えっ! あっ、渉がもう起きている……おはよう」
「おはよう、綾」
「今日は日曜日だよ。学校休みなのになんで、そんなに早いの?」
「別にいいじゃん」
「あっ、もしかしてデート?」
「違う。茂達と約束があるの」
いつも綾より遅く起きてくる渉が今日は、綾より早く起きていた。
自分より早く起きていた渉に不思議に思った綾は、デートかなと期待したが違ったみたいだ。
「ふ~ん、ほんとかな~?」
「ほんとだって」
「2人共、少し静かにしてくれ。ニュースが聞こえん」
「「ごめんなさい」」
滝森家の日課は毎日、朝のニュースを必ず見る事から始まる。探偵事務所をやっている父にとっては大切な情報網と言える。
それを見習って2人も朝のニュースは、必ず見るようにしている。いつか、2人は父の手助けになれたらいいと思っている。
父、蓮もそんな2人の思いに気付いているのか、今は簡単な依頼を2人にさせている。
ーー次のニュースです。昨夜7時半頃、高校生の死体が発見されました。発見された場所は自宅で
次のニュースーー
「えっ、う・そ、だよね。雫が自殺って……」
綾は自然とテレビを見ていたが、今、流れたニュースに膝の力が抜け、床に座り込んでしまった。
「「綾!」」
「綾の友達かい?」
「……」
「そうだよ。クラスメイトで友達だよ。なぁ、綾」
「……うん」
「綾」
母親と渉は驚き、蓮は冷静に綾に問かける。しかし、綾はショックのあまりか、言葉がでなかった。変わりに渉が答えた。
母親が綾を励ますように綾の両肩に手を置いた。綾はそれに気づき、母親を見た。
「お母さん……」
綾は座り込んだまま、母親の服にしがみついた。
「綾、大丈夫!」
「綾、部屋に行こう」
「でも、渉……約束が」
渉が綾に近づいて部屋に行く事を進めた。しかし、綾は渉には約束が、と言ったが渉は、首を左右に軽く振りもう一度、綾を見た。
「俺の方は大丈夫。それより今は綾の方が心配だ。綾、自宅じゃあ分からないけど、顔色悪いよ。部屋にいって休もう」
「綾、渉と一緒に部屋に行きなさい。少し休んだ方がいい」
「はい」
「行こう、姉さん」
綾の顔色はすごく悪かった。家族に休むよう言われ、渉は綾の部屋がある2階へと向かった。
2人が部屋に行ったのを見た両親はテレビを見ながら会話をしていた。
「かわいそうに。まだ、若いのに。しかも綾と渉と同じ歳で」
「あぁ。何が原因で自殺という道にいってしまったのだろうか。まだ、若いのに」
「そうですね」
「綾、大丈夫か?」
「うん……」
2人は綾の部屋にいた。2人は、ベッドのところに座っていて渉がずっと綾の隣にいた。
「渉、もう大丈夫だから出かけても平気よ」
「いいや、やめておく。今は綾の方が心配だから……それにさっきメールしておいたから平気」
「そう……。あのね、雫と最後に話した時に少し元気がなかったの」
綾はポツリと呟いた。渉は黙って綾の話を聞く。
「あのね、雫がね、元気なかったの。本人は風邪気味って言っていたけど、私には……何か悩んでいるように一瞬、そう見えたの。無理に聞くのも、どうかって思ったけど、こ、こんな事になるなら……無理でも、無理でも……話しかけて、雫から悩みを聞いて、あげれば良かったよ!」
綾は、途中から涙声になりながら、あの時、こうすればと後悔をしていた。
「綾……自分を責めるな。無理に聞かないで相談してくれるのを待っていた。そうだろう?」
「うん」
「じゃあ、それは綾の優しさだと俺は思う」
「渉……」
「警察が原因を見つけるってニュースで言っているんだ、だから信じよう」
「うん。ありがとう、渉」
その後。月曜日に学校に行くと朝、体育館で全校生徒の朝礼があった。そこで雫が亡くなった事を全校生徒に伝えられ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます