2ー2

          ***


放課後。綾は春奈の手伝いで委員会へ向かい、話を聞いていた。春奈の委員会は、美化委員会で春になってからの活動についての話し合いだった。今の季節は冬。春に向けての活動についての話し合いがようやく終わった。

 綾は春奈と一緒に廊下を歩いていた。

 「話し合いが早く終わって良かったね、春奈」

 「うん。ねぇ、あやっぺ」

 「うん?」

 「若菜の家に今から行ってみない?」

 「どこに住んでいるのか知っているの?」

 「うん、知っているよ。案内するからどう、一緒に行かない?」

 「……そうだね。少しくらいなら大丈夫だと思うけど行ってみる、春奈?」

 「うん、心配だし行ってあげたいの」

 「分かった。付き合うよ」

 「ありがとう、あやっぺ」

 2人は、自分達の教室に戻って鞄を持ってから若菜の家に向かう事になった。若菜の家は、学校を出て左へ向かって歩いて行くみたいだ。

 綾は始めて行くが春奈は、何回も行った事があるみたいだ。

 「メールした方がいいかな?」

 「寝ているかもしれないよね。それにすぐ返事がくるとも限らないし……とりあえず、分からないからやめた方がいいかもよ、春奈?」

 「そうだよね……あとでメールしてみるよ」

 「私もあとで送ってみるよ」

 綾は一度、自分の鞄から携帯電話を取り出して開いてみると画面には、メールマークがあった。綾はメールを確認してみた。差出人は渉だった。

 ー仕事が入った。電球交換だけだから俺一人で大丈夫だ。以上ー

 綾はメールを見て ー分かったー と返信をして携帯電話を鞄に戻した。

 「ここだよ、若菜が住んでいるところ」

 「若菜ってマンションに住んでいるのね」

 「そうだよ。2階の一番奥だよ」

 メールの返信している間に若菜の住んでいるマンションについた。

 綾は少し周りを見てみるといろんなところにマンションが建っていた。もし、自分一人で来る事になっていたら完全に迷っていたと思えた。2人はさっそく、若菜のところへ行った。けど。

 「ごめんなさいね。若菜、今、寝ているのよ」

 「そうですか。若菜ちゃんにお大事にと、お伝え下さい」

 「えぇ、ありがとう。若菜に伝えるわね」

 2人は若菜に会えずに来た道を戻っていた。

 「やっぱり寝ていたみたいね、若菜」

 「うん。大丈夫かな、若菜?」

 「あとでメールするんでしょう、春奈。その時に容態を聞いてみたら?」

 「うん、そうするよ。ありがとう、あやっぺ」

 2人は話しながら歩いて学校まで戻ってきた。学校に戻ってくると少し話をして2人は別れた。春奈は右の駅の方向へ、綾は真ん中に向かう。

 「じゃあまた、明日」

 「うん、またね」

 綾は自宅に向かって歩いていた。少し寄り道したから空が暗くなってきた。冬の季節は暗くなるのが早い。そのため家までの道なりが暗く見える。

 途中、電柱とかの明かりがあるがやっぱり暗い。綾は家に向かって歩き続ける。

 (早く帰らないと!)

 「綾!」

 「渉?」

 渉の声がして声が聞こえた方を見ると前から自転車に乗った渉が、こっちに向かってくる。渉は綾のところにくると自転車を降りた。

 「どうしたの、渉?」

「迎えにきた」

 「えっ、ありがとう~渉」

 「別にいいよ。冬は暗くなるのが早いから綾一人じゃあ心配だって、母さんが言っているし。まぁ……襲われても綾なら平気だと思うけど、俺は」

 「あら、酷いなぁ~渉君。まぁ、それでも迎えに来てくれたんでしょう。ありがとう、渉。家に帰ろう」

 「そうだな。やっぱり冬は寒いわ」

 2人は自宅に向かって歩き出した。さっき渉が言っていた『綾は襲われても大丈夫』という言葉の本当の意味は、まだ、秘密のままで。

 「メール見たけど……」

 「向かいの早野はやのさんの家。おじいちゃんからの依頼。おじいちゃんは家族に電球交換を頼まれていて、いざやろうとしたら、急に腰を痛めて交換できなくなったから、急きょ父さんに依頼がきた」

 「そう、それで渉が早野さんの家に行く事になったのね」

 「そういうこと」

 「じゃあ、渉 きね」

 「そうだな」

 「あっ、そうそう。茂君、大丈夫だった?」

 2人は歩きながら家に向かっていた。その時、綾が渉にあった依頼の事を詳しく聞いていた。渉一人で本当に大丈夫だったのか、一応、心配していた。

 そして綾は急に今朝の事を思い出して渉に聞いてみた。

 「あぁ、あれ。茂の勘違い」

 「はぁ、勘違い?」

 渉の答えに思わす綾も、もう一度、復唱してしまった。

 「そう。指名はされたけど、ここが当たるから教えてくれって言っていた問題を教えたら、実は違くって俺が教えたのは全然、意味がなかった」

 渉の話を聞いて綾はふっと笑って渉の事を見た。

 「ふーん、茂君らしいわね」

 「全くアイツには……ほんと困るよ」

 「まぁ、今日の事は大目に見てあげれば」

 「あとでなんかおごってもらおうかな」

 「茂君、かわいそう~」

 「いいんだよ、その時は綾の分まで奢ってもらうから」

 「私も?」

 「うん、そう。下手したら綾が教えたのだって無駄になっていたかも知れないし。今日はたまたま、時間がきて俺が教える羽目はめになったけど」

 「それはそうだけど、いいのかな~私も?」

 「いいんだよ。1人、増えたところで構わないだろう、どうせ」

 「渉……今日はだいぶ、機嫌きげんがよろしくないみたいね」

 「そうかな?」

 「まぁ、本人が気にしていなければ、けれでいいけど」

 「よし、明日、さっそく茂に言ってやろう!」

 「はいはい。茂君、かわいそうに」

 綾と渉は仲がいい。2人の事を知らなければ、2人の後ろ姿を見たら恋人同士に見えるくらいだ。でも2人は双子。

 2人には、簡単な仕事をやっているがクラスメイトに秘密にしてある。言ってもしょうがない事だしと2人は分かりきっている。

 2人はまだ、未熟でとても父のように探偵ですと胸張っていえるほど実力がない。けど、そこそこの実力があるというより、ついてきているといえる。

 2人は学校では普通の高校生として生活をしている。

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