大学四年生(後半)
もうそろそろ時効だと思い、おおよそ一年ぶりにメモを開いた。書き終えて、自分の記憶力にガッカリした上に、文章能力が著しく下がっていることを痛感したので、そこは多めに見て欲しい。それから、この殴り書きで大したことが伝わるとは思っていない。相手との関係性も相手の感情も、何一つとして描写できていない、ただの自己満足だ。
始まりは、朧気な記憶。Tを家に入れた時のことだ。お互いに酔っていて、でも俺はそれなりに冷静であった。コンビニで買った酒を飲みながら、恋バナやら、ゲームやらしていた。その会話の成り行きだったか思い出せないが、彼女は俺の手の甲に触れた。俺はなんとなく、彼女のことを意識しているように、顔をしかめ、照れくさそうに笑って見せた。すると、彼女は虐めてくるように、手を絡めた。冷たく、細い、綺麗な手だったことは今でも覚えている。しかし、あの時に抱いた感情は何一つとして思い出せない。
手を握り合ったのち、流れるままに抱き合い、添い寝して体に触れ――不純という言葉の意味を理解した。
それから一週間後、俺が沖縄に帰る二週間くらい前に、付き合ってほしいと言われたのだ。沖縄に帰るまでの間という期限付きの恋人になった。
付き合ったとはいえ、沖縄に帰るまでの間、既に予定が詰まっていたため、デートのために一日空けるのがやっとであった。
彼女がずっと行きたいと口にしていたバーへ行った。おおよそ一年前の出来事だし、メモも何もしていないため、その時の会話を具体的に書き出せないが、お互いに向けている感情を話した覚えがある。確か、そこで「好きになれそう」という言葉を言われたと思う。
大学三年の終わり頃、彼女に告白したことがあった。自分が救われたかっただけで、傷を傷で上書きしたかっただけで、そこに本当の気持ちなど存在しなかった――。
「好きになれそう」というのは、その時に俺が投げた言葉である。
それから、流れるようにホテルへ向かった。スマホの地図を頼りに、腕を組みながら歩いた。夜の街は寒くて、吐く息が白くて、酔いもあって少し浮ついていた。でも、冷静なフリをして、彼女をリードしたつもりだ。
ホテルに着くなり、一緒にお風呂へ入った。先に出た俺はスマホで、ゴムの付け方を予習した。それこそ、テスト直前の赤点候補生並の集中力で。
無事、翌朝を迎えた。帰りの電車で彼女にここで別れたい、と言われた。言われるがままに、俺は彼女に別れよう、と告げた。
その数日後、やっぱり付き合っていたい、と復縁を迫られた。嬉しい言葉をたくさんもらった。そばにいて楽しいとか、もっと話したいとか。でも俺は断った。理由はいろいろあるが、一番は自分と彼女が前に進むため、お互いが依存しないために。
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