大学二年生(後半)
後期も後半に差し掛かり、タイミングとしては、前回と入れ違いになる感じでKさんと急接近(?)することになる。
きっかけはまたしてもSNS。「甘い物を食べたい」という内容を投稿したところ、後輩のKさんがエアリプで行きたいと言ってきた。ほーん。
集団で何度か食事に行ったことがあり、少しばかりKさんに興味があったので、勇気を出してDMに凸った。所謂、デートのお誘いをした。気持ち秒でOKが返って来た。内心ウハウハ。前回の失敗は、このための失敗だったのだ! とか鼻伸ばして優越感に浸り、でも焦ってはいけないと心を落ち着かせる。毎日と言っていいほど、夢に彼女が現れた。どれも幸せな雰囲気で、目を覚ましても夢現であった。
デートの前日、サークルの新歓があり、そこにはKさんも来ていた。今でもあの時のことを鮮明に覚えている。話の流れで、とはいえ、彼女は俺の膝を触ろうとしてきた。彼女は陽とは言い難い、控えめ、内気な性格なのに、だ。
その瞬間、胸を撃ち抜かれた。結局、触りはしなかったが、触ろうとしたけど躊躇って引いた手と、誤魔化すような恥ずかしがった表情に目を潰された。だって、よく考えてください。内気な後輩が頑張って触ろうとして、でも恥ずかしくて手を引いたんですよ? ギャップ萌えもいいところ。一般オタクは悩殺万歳って感じですよ。それに明日デートを控えていることもあり、ようやく、ようやく恋人ができる。と内心ガッツポーズ。
今考えれば、明らかに上手く行き過ぎていた。しかし、その時は何の不安もなかった。
焦るな、早まるな、と言い聞かせ眠る。朝は遅刻しないよう、一時間早く待ち合わせ場所へ行き、店の場所も確認しておく。待ちながらどんなことを話すか脳内シミュレーションを繰り返す。
彼女も到着し、早速店へ。
***
店では匂わせ写真を撮ったり(もちろん、SNSに上げました。真っ黒歴史です)、あれやこれやの話をして個人的にはいい感じに進んでいた。
食事を終え、外を暫く散歩して、無理矢理ではあったが、次の約束も取り付けられた。
そんなこんなしている内に、気持ちは取り返しの付かないところまで来ていた。脳内会議では「相談した友達には焦るなと言われているだろ!」「もっと落ち着いてゆっくり攻めるんだ!」と、警告された。が、心はそんな戯言、どうでもよかった。
流石に、二人きりのデートをOKし、膝を触ろうとして、死ぬほどエアリプ合戦(俺の学科はエアリプ反応が多いのだが、謎の自信になっていた)した相手と付き合えないはずがない。オマケに、匂わせ写真(その時謎に流行っていた)も撮ってくれたんだぞ? これで恋人できなかったら、一生恋人できないだろ、と思うほどの勝ち確なのに、ここで逃げるなんて男じゃない!
急遽、舞台を用意し、ベンチに座る。風が冷たい。とてもぎこちない上に、バレバレの手法で告白までの道を作った。後方にはなんか知らんけどうるさい雰囲気ぶち壊しおじさんがいたが、その時の俺には関係なかった。
「俺さ、Kさんのこと好き」
「どういうところが?」
もちろん、そういう反応も想定内であった。脳内シミュレーションで何度も予習していた。しかし、「あぁ! ここ、進研ゼミでやったやつだ!」状態にならず、少しばかり言葉に詰まった。
あぁ、そうだった。告白ってこういうものだった。緊張して震える手が、声が、目が、不安定な場所にあって、自分のことを見失ってしまう。そういう感覚。
でも、俺はその時できることは全てやった。伝えたいことは全てぶつけた。しかし、彼女は暫く黙り込んでしまった。
あれ……? と疑問に思うわけです。どうして何も答えてくれないのか。吐きそうなほど苦しくなり、泣きそうになった。やっぱり早まってしまったのだと。
そこにいるのが息苦しくなって、返事は今度でいい、帰ろうと言った。電車の中では普通に話した。しかし、帰った後は撃沈。死んだようにベッドに沈み、いろいろ考える。俺って生きるの下手くそなんだなぁ……と思った。
待て待て。こんなんで終わってはいけない。Noの返事も貰っていないのに、諦める訳にはいかない!
張り切ってたくさんアプローチを掛けた。もう、引き下がることなんて出来なかった。
理由もなく電話を掛けて夜遅くまで通話した。無理矢理取り付けた約束も果たし、次はクリスマス前に二人で出かけられないかLINEで聞いた。返事どころか既読も付かない。
最初はLINEあんまり見ない人なのかもしれない、程度であった。SNSでは浮上しているが、女性はそういうものだと言い聞かせ、返答を急かすのを辞めた。しかし、数日経っても既読が付かず、でも、SNSでは俺の投稿にいいねを押してくる。
流石に、不安になり、返事の催促を送った。するとようやく返事が来て、ほっ、となるはずもなく。返事の内容的に、避けられてる気がした。それから、こっちから連絡は取らないことにした。SNSでも彼女に触れないように、距離を置いた。
そして冷静になった頃だった。友達に呼び出され、Kさんのことについて色々言われた。まず、Kさんは俺のことを怖いと思っていたらしい。俺はサークルの部長をやっていたため、誘いを断れなかった。そして、SNSでの匂わせが原因で裏で色々あったみたいで、彼女からしたら俺は困った存在だと。
何となく知っていたとはいえ、それが事実と確定したことで死にたくなった。そりゃあ、自分のことしか考えずにアプローチするから。恋愛するのが下手くそだから。自分の存在が否定されたから。
さて、「これで恋人できなかったら、一生恋人できないだろ、と思うほどの勝ち確」なんて思っていたのはどこのどいつでしょうか。そうです、私です!(魔女の旅々はいいぞ〜)(たまに現実逃避しないと書いてる途中で死んでしまう)
まぁ、この程度で終われば良かったんですよ。ここから地獄へ突き落とされました。
一応、不本意であるとはいえ、怖がらせてしまったので謝ろう、ということになりました。日付は十二月二十四日。そう、クリスマスイブです!\(^o^)/
ちょっと意味が分かりません。いや、めちゃくちゃ意味が分かりません。いや、都合がいい日がそれってのは分かるんです。けど、どうして世の中のリア充共がワイワイイチャイチャしてる時に俺は鬱々した気持ちで死ぬほどしんどい思いをしなければならないんですか???
惨めです。悔しいです。不平等です。なるほど、これが均衡ってやつですね。幸せな人がいれば不幸を背負う人もいる。俺は後者に選ばれたわけですね。俺の恋愛事情はずっと負に傾いているのですが……?
幸せなうちに死んでおけば良かったと、本気で思いました。
何とか、涙が出そうなのを我慢して本人に謝りました。いや、泣きたいのはKさんの方だろ、って思いながら、また自己嫌悪に陥って、負の連鎖が続きました。その後、友達ホラー映画鑑賞会の予定があったのですが、上映中はずっとスマホゲーの周回をして心を無にしていました。
翌日、死んだ魚の目をピクピクさせながら実家に帰りました。すると、母が尋ねてきました。
「あんた、あっちで彼女作ってないの?」
「……まぁ、コロナで出会いとかないし」
母上、その言葉は今の俺には効果抜群だ。タイプ一致、天候補正ありの状態で威力120の技を四倍弱点で打たれた時くらい痛いです。即死です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます