高校三年生


 Mを諦められるなら何でもよかった。逆に友達という関係が歯痒くて、時間の経過と共に自分の存在意義と彼女との関係に疑問が生じ始めたのだ。このまま彼女と友達であり続けることはともかく、俺は彼女にとっては友達でしかない。息苦しくて仕方なかった。


 三年生になり、隣のクラスに可愛い子を見つけた。躍起になっていた俺はその子に近づこうと考える。


 俺はAO入試で先に合格が決まり、面接練習を手伝ったりしていた。そして、その子は推薦の面接練習相手を探していて、俺の友達がその相談を受けていた。友達は俺を面接練習のお手伝いとして呼んでくれた。俺はその子と面接の練習をしたり、放課後雑談したりするくらいには仲良くなった。


 だけど、彼女が推薦に落ちてからは話す回数も激減し、最終的にはほとんど話せなかった。しかし、俺は県外進学ということもあり、痛いほど好きにならずに済んでよかったと思う。


 このまま卒業し、別の人生を歩んで行くのだと思った。運命はある意味残酷だった。


 偶然、俺の通っていた自動車学校にその子も通っていたのだ。久しぶりと言って少しばかり話した。


 そこで俺は彼女の俺に対する気持ちを遠回しに尋ねた。AO入試合格者の課題で書いた自信作を読んでくれないかと言った。


「えー、あんまり小説は……」


 俺への興味は皆無だった。この言葉を以って俺はその子に対する気持ちの全てを切り捨てた。




*大学一年生へ続く

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