小学校四年生(番外編)
小学校四年生の時。席替えで隣になった女の子と家の方向が同じということで、一緒に帰っていた。その子とは席が隣になってからよく遊ぶようになり、この帰宅だって何十回と繰り返してきたものだ。
好きな人の話をしていた。何でもその子には好きな人がいるそうで、俺は興味津々に誰であるのか聞いていた。
「うーん、今、私の一番近くにいる人」
「近くって……俺!?」
とまぁ、告白されたわけだ。しかし、当時の俺は好きな人がいて、その子も俺に好きな人がいることを知っていた。
結局のところ、"付き合う"という概念もなかったので、普通に友達として仲良くした。
……で、どうしてこの話をしたかというと、この後に俺は罪を犯すことになる。この罪の罰として、今後の恋愛事情が荒れてしまったのか、なんて思ってしまうほどの大罪を。
バレンタインデーが訪れる。その子はバレンタインデー当日、休んでいたことをしっかりと記憶している。その数日後、その子は登校して来たが、病み上がりでまだ体調が優れていない様子であった。
帰りの会が終わり、こっそりチョコを渡された。その時、感謝の言葉を述べたかどうか覚えていない。
家に帰り、その子からもらったチョコを確認すると、一口サイズの手作りチョコが三つあった。早速一つ食べた――口に合わなかった。
俺はトイレに駆け込んで吐き出した。
体調を悪くしていながらも作ってくれたというのに、だ。そして、残った二つは棄てた。それだけに留まらず、嘘でも彼女に「美味しかった」と言わなかった。そもそも、これ以降その子と喋ることはなかった。部活やクラス替えがその原因とはいえ、俺は最低なことをしたと思っている。
*六年生へ続く
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