第4話 中世の魔女たち

  ローマ帝国の時代が終わった後の中世は知っての通り、多くの災難に見舞われたことで民衆も支配者層も不安で宗教に救いを求めるほど混乱していたから暗黒時代と呼ばれているんだよ。

  民衆にとって頼みとなる皇帝や貴族もあてに出来ず、先の見えない不安と混乱は、相当な精神的負担をかけていたんだと思うよ。多分、不満もかなり出てたんじゃないかな。

  そんな中で、古の魔女たちは尊敬の対象だったのに対して、中世の魔女たち異端として扱われる不遇の立場に追い込まれていくんだよ。

 

  この暗黒時代のキリスト教はというと、公認されてから急に大きくなり過ぎたこともあったと思うけど、儀式や教義について色んなところで意見が分かれて派閥が出来ちゃったらしい。まあ、それまでの教義が定まってなかったし、キリストが亡くなって300年以上経ってたら仕方ないよね。

  皇帝は教義の統一を図るために“キリストが神の子である”と唱える一派の信仰を正統、それ以外は異端として異端審問をするようになったんだよ。

  最初はキリスト教内部のことだったのに、異教徒へも異端審問がかけられるようになったみたい。


  そんな異教徒の一つとして、地母神や自然崇拝をしていた魔女ラミアと呼ばれる人たちにまで及んできたんだろうね。

  でもさ、長いこと尊敬の対象だった魔女たちを普通に異端審問にかけようとすれば、キリスト教から民衆が離れていってしまうよね。そこで、神学者たちが作り上げた、現代にまで伝わる悪い魔女像なんだと思うんだ。

  例えば、猫を飼っている人は魔女だ、妖術を使う人は魔女だ、とかいう具合にね。

  その魔女像に一つでも該当しようものなら、生きては帰れないと言われていた異端審問にかけられてしまうなんて。


  私たち現代人が魔女のイメージを聞かれると、夜の集会にて悪魔契約を交わすサバトが思い浮かぶんじゃないかな。サバトはユダヤ教の集会のことなんだけど、他の宗教を排斥しようとするキリスト教からすると、ユダヤ教も魔女たちの地母神や自然崇拝も異端なわけで、神学者たちによって魔女は悪魔の手先と定義されて他の宗教が一括りにされたんだと思うよ。


  他にも、婚約者がいる男性貴族の一目惚れによって町娘と恋仲になり、怒った貴族によって「婚約者がいる男を誘惑した町娘は魔女だ!」って事例もあってね。これは、完全に言いがかりだよ。神話のラミアに則り、魔女は悪と誇張されたのかもしれないね。


  ただ、魔女狩りには地域によって差があって、色んな魔女狩りの原因仮説とそれを否定する根拠があるから、確定はしていないんだって。だけど、事例を見ると王族や貴族、民衆の色んな思惑が絡み合っていたんだと思うよ。近世になるにつれて、科学などの学問が発達してきたから、魔女狩りは徐々に行われなくなったけど、中世は多くの魔女と呼ばれた人々が命を奪われた悲しい時代とも言えるよね。


  魔女狩りについてまとめると、皇帝が求心力を失った結果、キリスト教の台頭と暴走や、無知による社会不安から民衆の集団ヒステリー現象が起き、人々にとって都合がいい悪い魔女が生み出され、魔女とされた人々に対する裁判や刑罰、あるいは法的手続きを経ない私刑などの一連の迫害が起きてしまったということ。

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