第3話 嵐の前触れのような雰囲気を纏うメンヘラ彼女
下校途中、紗央莉さんに会えるかと思ったがそう簡単にはいかなかった。そして何事もなく家に着いて制服を脱ぎ捨てた。
俺の部屋はオタクグッズに囲まれている。そう、楽園だ。俺が付き合わない理由。それは時間の無駄、自分の趣味のためにお金を使えない。身だしなみを流行りのものにするのがめんどくさいなどが主な理由だ。
いくら可愛い女の子から告白されたからって「はいわかりました、付き合います」などというはずがない。相手のことを知らないのなら尚更だ。
もし、仮に彼女を自分の部屋に呼ぶ一大イベントがあるものなら一瞬で引かれる。二次元に偏見を持っている女性は今でもなお多いだろう。美少女なら尚更引くだろう。
以上が付き合わない理由。
そんな事を考えながら撮りためていたアニメを観ていた時だった。いきなりスマホの通知がなった。
「ひぃ!」
思わず声を上げてしまった。
なぜなら普通の通知ではないからだ…
そう、LINE通話の通知だ…世の中のリア充は慣れているだろうが普段LINE通話をしない自分にとっては恐怖でしかない。まぁ、このタイミングならあの人しかいないよな…
やはりそうだ。恐る恐る確認したら送り主は紗央莉さんだった。仕方なく応じる事にした
「何の用だ?」
数秒間の沈黙の後、開口一番彼女は言った
「何の用って?返事よ返事!わたしと付き合うんでしょ?」
……はて?答えは数時間前に出したつもりだったし目の前で伝えたよね?ノーって⁉︎
「いや、付き合わないって言ったよね?数時間前に?」
「君があれから冷静になって考えた結果、答えが変わったと思ったから電話したんだよ?」
「したんだよ?じゃなくてだな!どうしてそうなる?そんな簡単に変わらないだろ普通」
どれだけ自分に自信があるんだよこの子は。普通フラれた相手に対して「考えが変わった?」などと聞くメンタルなんてないだろ。
それも数時間前の出来事で。
「なんで?私のどこがダメなの?私こう見えてモテるよ?ダメなところは直すから付き合ってよ?損はさせないよ?幸せにするからさ!ね?」
いや、ダメなところも幸せにしてくれる未来も想像出来ないんだが…
「あー色々聞きたいことがあるけどまずはなんで俺なの?自分で言うのもあれだけどお前と違ってモテてる訳でもないし、影薄いし、何も魅力なんてないと思うぞ?」
何これ?何の時間?自分で言ってて恥ずかしい…恥ずかしいと言うよりみっともない。
「君を好きになった理由?影が薄くてモテなくて、他の女に取られる心配がなくて、顔も普通な男の子だから。要は一目惚れってやつ」
あーなるほど。本当に俺のことが好きなのかな?💢
「浮気される心配は確かにないな、紗央莉さんみたいな美少女なら尚更だ」
「うむぅぅ〜(//∇//)」
なんか聞こえるけども気にしないでおこう。
「だったらいいじゃん付き合おうよ。料理だって得意だよ?毎日お弁当作る事だってできるもん!」
確かにこんなに可愛い子と付き合えたら幸せかもしれないなぁ。今までは彼女はいらないと思ってたけどそれは彼女が今までいなかったからで実際に付き合ってみないとわからないこともあるからなぁ。
しかも見た目だけドストライクなんだよなぁ。そして俺の中で色々考えてみた。
見た目も可愛いし何よりたわわな胸が…ククク、あわよくばあんな事まで…そうしてクズの権化のような俺の魂が出した答えは
「わかった。とりあえず1週間お試しで付き合ってみようか。自分も紗央莉さんもお互いのことをまだよく知らないしお試しで付き合う事によって見えてくるものがあるだろうし。それによって気持ちが変わるかもしれないから。それでもいい?」
「うん、私の気持ちが変わることなんてないけどそれならいいよ。よろしくね和雄くん❤︎」
「う、うん。それじゃあ月曜日また学校で。」
電話を切ろうとしたら紗央莉さんが
「明日か明後日、暇?」
とやや早口で言ってきた。
「明日は午前中バイトでその後なら空いてるけど?」
「じゃあ明日の15時に駅前の本屋付近で待ち合わせね!楽しみにしてるから!」
ガチャ。切れてしまった。せめてこっちの意見も聞いてもらいたいところだったけど既に遅かったか…
まさかいきなりデートって⁉︎動揺せずに会話してた自分を今更ながら褒め称えたい。よく美少女相手にオドオドせずに会話できたものだ。
モテる女の子も色々あるんだろうなぁ。イケメンから告白された事なんて数え切れないほどあるだろうし、実際に付き合った事もあって過去に嫌な思い出があるかもしれない。でないとこんな冴えない窓際族のボッチことオレに告白などするはずがないもんな。
「とりあえず、デートについて予習しないと。」
全然楽しみなんかじゃないんだから!
携帯の検索履歴には「初デート、エスコート…etc」などの表記が連なったのであった。
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