持続性

ドントの端っこの街に、俺は母のハクレンと2人で暮らしていた。


毎日大勢の兵士の足音が聞こえたかと思うと、その次の瞬間には銃撃戦が始まっていた。





父親がアヤメ兵としてドントに訪れていたことを知らずに、俺はその日も、晴れた太陽の下に出ていた。



父親は不器用な人で、なにをしてもリアクションが少なかった。綺麗な白い髪はアヤメ人が持つ特徴だと知ったのは、父が死んでからだった。







あっという間の出来事だったんだ。なんの武器も持たず、帽子に菖蒲色の星を付けた1人の男が近づいてきたと思ったときには遅かった。


それが父だと気付いたときには、父はもう頭を撃ち抜かれていて、その大きな身体がグラッと揺らいだ瞬間、初めて父の笑顔を見た。



朗らかに笑えるんだなこの人。





父の死体に近づくと、見慣れた菖蒲色のピアスが見えた。なにを考えていたのかは俺にもわからないが、無我夢中でそのピアスを父の耳から取ると、自然と涙が溢れてきた。


俺に会おうとしてくれたんだな。だけどアヤメ軍だからポポ軍に殺されちゃったんだな。


冷静な頭の中とは裏腹に、熱い涙が止まらない。





そのうち、父を撃った若いポポ軍の黒髪の兵士が自分の頭を撃ち抜き、2人はあっという間に両軍に運ばれていった。











別にどうでもいいんだ。傷ついてる暇なんてないのさ。これが戦争だって、わかっていたはずじゃないか。



なのにその日の夜は、母の胸の中で、悲しくもないのにずっと泣いていた。






ああ誰が、父を返してくれるのですか?









戦争が終わって、何年も経った。


相変わらずドントで暮らしていると、夢みたいな出会いもあるものだ。




父と同じ、輝くばかりの美しい白髪を持った女性が、こちらを見てにこりと微笑んだ。





別に救われたいわけじゃない。別に守られたいわけじゃない。別に面影を追いかけているわけじゃない。



なのにああどうして、



どうして、




こんなに胸が苦しいんだろう、父さん。









そのレストランは特別人気店ってわけではなかった。綺麗な店内、大きな窓から入る陽の光が、とても眩しかった。



オーナーはネリネさんといって、この店の名前にもなっているDiamond lilyという花の別名と同じ名前だとすぐわかった。




思った通り、ネリネさんと弟のアマリリスは両親ともにアヤメ出身だった。


白い髪、青い瞳、ああ、俺は誰を求めているんだっけな。








決して戻らない、なにか大切なものを、俺はずっと追い続けていた気がするけれど、それがなんだったのか。きっと忘れたくて、俺は忘れていく。





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