箱入り娘
弟は昔から弱くって、私は心配だったの。
アマリリスって名前だけあって、弟は本当に綺麗な顔立ちをしてて。私驚いちゃった。本当にこんな子のお姉ちゃんになれるのねって。
お父様とお母様は、アヤメにいた頃のお歌とか、手遊びとか教えてくれたのよ。毎日毎日、アヤメから一緒にこっちへ来た人たちと踊った。
あれは、挫けそうな心をみんなで慰め合っていたのね、今ならわかるわ。
ある朝、お父様とお母様がポポ軍の偉い人たちに呼ばれて出て行った。
それきり、2人は帰ってこなかった。なんとなくわかっていたし、なんとなくあっさりしてた。他の家のアヤメ人も大体殺されたんだってあとで聞いた。
馬鹿だってよく言われるんだけど、私はドントに残ることにしたの。アマリリスがいれば怖くなかったの。
お母様が残してくれたレシピを頼りに、私は毎日料理をした。
しばらくの間、お父様の知り合いのアヤメ人のおうちにお世話になっていたわ。
私が20歳になった頃、レストランを開いた。アヤメ人がみんな協力してくれて、レストランの2階でアマリリスと2人で暮らせるようになったのね。
どう?素敵な話でしょう。
私はね、最後はどうだってよかったの。勝手な話かもしれないけど、最後まで私はお父様とお母様と一緒にいたんだわ、間違いなく。
アマリリスは元気かしら。
あの子ってば、人一倍寂しがりやなの。あんまりそう見えないかもしれないんだけどね。
アマリリス、モクレンとシラーを困らせてはダメよ。彼らは本当に大切な家族なんだから。
あなたの白い髪と青い瞳は、輝くばかりの美しさね。お母様にそっくりよ。お父様には、背の高さだけ似たのね。
あなたは私に、戦後20周年のお祝いのお祭りの中へは行っちゃいけないって強く言ったわね。うーん、どうしてかしら、もう十分かなって思ってしまったのね。
あのとき、あなたの言うことを聞いて、モクレンとシラーが来るのを待って、いつものように4人でランチを食べているその光景に、私は疲れてしまった。
大切で大切で仕方ないあなたたちのことを、もうこれ以上愛し続ける自信がなかったの。
私は綺麗なアヤメ人。ねえそうでしょう?
ポポで生まれ育ったモクレンやシラーとは、違う世界を見てきたの。
あら、もう時間かもしれない。
後悔してないつもりだけど、ほんの少しだけ、この白い髪と青い瞳が憎いの。本当だめね私。こんなに綺麗なのに。誇るべきなのに。
いつだって私はアヤメ人だったけど、本当に幸せだった。
ああでも、そうねえ、わがままを言ってもいいのなら、次はポポ人に生まれたいの。
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