強い虚栄心

ネリネが死んだのはある晴れた日のことだった。


戦後20年をお祝いしたお祭りが、ドントで1番大きなそこの通りで開催され、たくさんの人が集まったその中でのことだったらしい。



白く美しいワンピースが、赤い血で染まっていた。恐らく元ポポ軍の兵士たちによるものだろうと警察は言った。








「だから行くなと言ったんだ」



アマリリスは声を荒げていた。


シラーと俺は、病室のベッドとアマリリスの後ろ姿を見ながら、自分たちの避けられない運命を呪っていた。



いつものように買い物を済ませ、いつものようにDiamond lilyを開店させるはずだった。



彼女の白い髪と青い瞳は、こんなことのためにこんなに美しく輝き続けたわけではなかったのに。















その日の夜、アマリリスにDiamond lilyに呼ばれた。



「気持ちの整理はついてるかい?」


こっちのセリフだ。


アマリリスは普段通りだった。客席の1番手前、よく4人でランチを食べたこのテーブル席に俺を手招きした。


「モクレン。君には言えると思ったんだ」


泣き腫らした目は、いつものように綺麗な青色をしていた。俺の大好きな、あの目。


「僕は、ずっと、ずっと前から、ここが嫌いなんだ」


アマリリスの言った意味を、ゆっくりと噛み砕いていく。


「ポポに居続けたことで、ネリネを失った。両親が、戦時中のアヤメ人大量虐殺で死んでいったのも、僕ははっきりと覚えているんだ。ここへ来て、一体誰が幸せになったというんだ」






一瞬、ネリネの姿が、怒りに満ちたこのアマリリスに重なった。


綺麗に当てはまる。


そうか。そうだったんだねネリネ。君はずっとポポが嫌いだった。違うかい?



「ネリネ、ネリネ、ああネリネ!」



アマリリスの長く美しい白髪が、アマリリス自らの手で歪んでいく。


一体なにを生んだんだ。戦争は、一体なんのために。アマリリスの目が大きく揺らいで、4人で毎日のようにランチをしたこのテーブルを力いっぱいに殴っていく。


それじゃなにも解決しない。アマリリス。けれど、そうでもしないと救われない、君の気持ちが、痛いほど、苦しいほど、わかってしまう。







「...明日からまた、いつものように営業したら、ネリネはなんて言うかな」


疲れ切った顔で無理に笑ったアマリリスの瞳を、俺は見つめていることができなかった。






アマリリスは大嫌いなこの地に、なおも留まろうとする。君たちはずっと、心の通った姉弟だったんだね。



両親が死んだこの地に住み続けることを選んだネリネ。


姉が死んだこの地で生きていくことを決めたアマリリス。










神様どうか、彼らが今度こそ、報われますように。






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