第31話 下準備はこれで十分だ
「さて、トロイアの勧誘も終了し、アンドロイドとの同期も無事成功した。これより、戦争に殴り込みを入れる詳しい作戦の説明を執り行う。」
「トロイア、アンドロイドの使い心地は?」
「……悪くねぇよ、勿論。」
素直なのかそうじゃないんだか。
「で?俺との約束、覚えてんだろうなラグナロク。」
「ああ勿論だ。まず始めに、サラマンダーとトロイアに動いてもらう。」
「え、お、俺も?」
「両名はアンドロイドのネットワークに侵入しろ。経路は私が既に確保してあるのでそこを使ってネットワークに潜入し、暴虐の限りを尽くせ。何でもして良いぞ?人間側のネットワークを破壊しようが、AI側のネットワークを破壊しようが誰も咎めない。それでまずは概念側の破壊だ。」
「まずは、って事は他にも何かあるんだな?」
「ああ。次、ニルヴァーナには自宅、自宅周辺の警備と此方に近寄ってきた敵勢力の破壊を頼む。」
「周辺まで、と言うと?」
「奴らは恐らく警戒し、地場の中に入ってくるのはかなり後の方だろう。なんたって諸刃の剣だからな。が、もし侵入した場合は戦闘に移ってくれ。」
「はーい。」
「それにさしあたり概念での破壊に気が済んだらサラマンダーは地場外の敵勢力をミサイルやら何やら遠距離爆撃だ。」
「だからこいつAIだけじゃなくてアンドロイドにも拡張機能つけたのか……。」
「じゃ、じゃあその間俺は何をすれば……?」
「その後はトロイア、お前の独壇場だ。サラマンダーと言う枷が居なくなった事でお前にとって一方的に相手を苦しめる事の出来るウイルスを放ちまくれ。まぁつまり、現実でアンドロイドとしてサラマンダーが戦闘に。トロイアはサラマンダーの防衛と共に電脳世界で暴れ倒せ。」
「え、待て待て。それ、トロイアの負担でかくないか?」
「……別に、良いよ。」
「良いのか!?」
「構わない。これでも、即席のウイルスを大量生産するのは得意だからまき散らすだけまき散らして大まかな命令を送って各自で暴走させれば俺は指令だけ下す、単純作業だ。……何も困らない。」
「次にイージス。イージスはニルヴァーナの補助だ。ニルヴァーナは対アンドロイドのみを担当し、イージスは対人間を担当してくれ。人間側からの攻撃を防護フィールドで防げ。」
「まぁ、対人間ならコアにそれほど負担掛けなくて良いから大丈夫かな……。」
「ネクロポリスは人間達の不安を煽ってほしい。」
「不安を煽る?例えば?」
「“核ミサイルのプログラムを乗っ取って反転させる”、とかな。」
うっ、わ。
「……くく、成程?成程、成程。」
「……ねぇそれ、ネクロポリスが全部跳ね返したら私はただのブラフになるわよね?」
「ああ。そうなればネクロポリスを仮に攻略したとしても今度はイージスと言う盾が現れる訳だ。そして、イージスが耐えている間にネクロポリスをアスクレピオスに修理させればまた同じ手を使えるぞ?」
うわぁっ……。
「……本当、性格悪いわね。」
「まぁ、僕は構わないよ。元々、戦争には参加しない約束だったし、実際それを守っている訳だから。」
「基本的にノアとアスクレピオスは誰か1体でも欠けない限りは何もする事がない。」
「それで?まさか、そのままロキが出てくるまで待つとか言わないだろうな。」
「そんな非効率な手、誰が使う物か。ここまではただの下準備だ。我々の真の目的は特殊兵器の破壊だ。」
「「「特殊兵器?」」」
「まさか……人間がアンドロイドを殲滅する為に作ったとされる原子力を組み込んだ特殊ウイルスが搭載されたドローンの事じゃないでしょうね。」
「流石だな、ニルヴァーナ。」
「うわぁ……。下手すると特殊兵器周辺も吹っ飛ぶわよ?」
「構わん、吹き飛ばしてしまえ。」
「おっかねぇ……。」
「が、その肝心な兵器は既にロキの元。ロキが移動する度にそいつも移動してるんだ。」
……ちょ、待て。
「それって、ロキがそれを取り込んだか、はたまたそれに組み込まれているかだよな?」
「流石は博士の妹君。その通りだ、レディア。ツチノコにはロキと特殊兵器の現在地を特定してもらいたい。」
「ま、待って!と、特定は出来ても僕じゃハッキング負けしちゃうよ!?」
「安心しろ、特定するだけで良い。特定したらそのデータを直ぐに私に送れ。が、ここで問題となるのはツチノコの検索ルートを逆走されてここの場所がばれ、ハッキング戦争が勃発する事だ。それの対策の為、クロノス。お前の力を借りたい。」
「検索ログの書き換えか?」
「ああ。腕試しでウイルスを飛ばしてくる可能性もあるのでそれをトロイアの居る電脳世界に逸らすとかでも構わん。」
「うわ、スリリング。……でも、それぐらいの方が遣り甲斐はありそう。」
「そして……最後に、レディア。」
「な、何を期待してるか知らんが私が人間である事を忘れてないだろうな。お前達みたいにずっとネットに潜っていられる訳でもなければ、疲労がない訳でもないんだぞ?」
「レディア、お前もハッキングの類は得意だろう?俺がそこに入り込めるよう、一瞬でも良いから道を作ってくれるだけで良い。後は俺がやる。」
「……ま、待て待て!ハッキングなんて、私よりお前の方が」
「それでは駄目だ。レディア、博士の血を引くお前でなければならない。ロキは用心深くてな。私がハッキングを仕掛ければそこで私とロキの総力戦が始まってしまう。……が、ロキは私よりも先に作られたAIだ。無論、私とは違ってレディアとの思い出やら情報やらもあいつの方が多い。私がやるより確実にあいつの隙を作れる。」
……。
「……まぁ、そういう事なら。ただ、本当に一瞬でハッキング負けするぞ?良いんだな?」
「ああ、構わん。」
……何を考えてるんだこいつ。
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