第29話 最後のピースは

「あーあー、とうとうアスクレピオスまで仲間に引き摺り込みやがった。」

『あくまで一時的な、だけどね。』

「あら、用心深いのね。」

『勿論だよ。……僕のデータベースではイージス、君も十分用心深かったはずだけれど。』

「私?ええ、まぁこのメンバーの中では2番目くらいに用心深いかもしれないわね。でも、この人達に用心する必要なんてないもの。」

『どうして?』

「用心した所で叶わないから。」

「さて、諸君。次が最後の勧誘となり、とうとう戦争へ革命家として切り込む事になる。そうなれば我々はAIとして、レディアを守ると同時に今まで当たり前だったAI対人間の社会を崩壊させる。……そろそろ気を引き締める事だな。」

「そんな分かり切った事は良い、次の目的は?」

「次のターゲットは、トロイアだ。」

「おい、ラグナロク。今度こそイカレたんじゃねぇか?」

「そ、そうよ!本当に貴方何考えてるの!?」

「そのやばい事を淡々と言う辺り、実にシレア博士を連想させるよ……。」

「トロイアと言えば……思いつくのは神話のトロイア戦争だけど。」

「実際、それから由来されて生まれたAIだ。存在その物が電子ウイルスで形成されたAIでな、奴に作れないウイルスも、奴が無力化出来ないウイルスもない機械にとって天敵の中の天敵とも言える存在だろう。お前達人間で言う、常に新型の疫病クラスだ。それも、どれだけ研究しようとワクチンどころか構成情報すら掴めない程の。」

「サラマンダー以上の爆弾じゃねぇか……。」

「……いや、俺よりかなりやべぇよそいつ。あいつは基本的に無差別破壊者だ。気ままに壊して、気ままにウイルス除去に必死になってコアが焼き切れるのを眺めてるような奴だぞ?」


 うわぁ、サイコパス。


「おかしな奴らだな、敵であってほしくないからこそ味方に引き入れるんだ。それとも、負ける要因を誰かに渡しても良いのか?」

「「「ぐっ。」」」

「……まぁ、そういう意味では勧誘するのが安全だ。ただ、彼がもし聞き耳を持たずにウイルスをまき散らせば我々は革命軍として戦線に参加する事なく滅ぶ訳だが?」

「その際には私自ら破壊する、完膚なきまでに。そして、残った破片データからその能力だけを吸い上げる。」

「「「……うーわっ。」」」

「……何だろう。お前が直々に動くって言うだけで言葉に重みがずっしりと乗るだが。」

「そうか?嬉しい限りだ。」


 遠回しに怖いっつってんだぼけ。


「では、俺がトロイアを探し、ここまで連れてきてみよう。まぁ、敵になるよりは良いと思えば案外妙案かもしれんからな。」

「ゆ、勇気あるわね。」

「ほ、本当に大丈夫……?」

「ああ、大丈夫だレディア。相手はハッキング型。ならば飛んできたウイルスを全て破壊させていけば良い。」


 ……あ、そっか。ネクロポリスって“死の都”なんだっけ。

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