第28話 戦争は嫌いだ
で、
「……もう呼び出せたんだ。」
「ああ。無駄に時間を浪費するのは嫌いでな。」
『……なら、僕の時間を浪費するのも辞めてほしいのだけれどね。』
「そう言うな、アスクレピオス。もしかするとお前にとっても素晴らしい物になるかもしれんぞ?」
『どうかな。君達の噂はもう十分AI間でも人間間でも伝わってる。“世界に革命を謳う、新たな戦争家”だと。物珍しい、人間の真似事をする最凶AIの1柱とそれに操られてる人間。……悪いけど、戦争するつもりなら僕は手伝わないよ。僕は、戦争なんて好きじゃないんだ。見てるのも、関わるのも、全部嫌だ。』
「我々も真っ向から戦争をしようとは思っていない。あくまで、“戦争を終わらせる為の革命”だ。それに、私はレディアを操っている訳ではない。」
『操ってない?』
「ああ、勿論だ。私は管理者権限により、レディアを操作するプログラムは作成、又は操作出来ない。」
「出来たらやるのか?」
「自殺を止めるぐらいはするだろうな。」
「……それはそれで残酷だな。」
「それに関しては分からん。私はお前を守る為に居るんだ、護衛対象に死なれては困る程度にしか思考出来んのでな。」
こういう所は機械だよな、こいつ。
『……理解するに値しないね。』
「そうか?人間は、お前のような閉鎖的なAIよりもずっと面白い計画を立てたのに?」
『面白い計画?』
「私の創造主であり、ロキの創造主が作ったユートピア計画だ。」
『ろ、ロキの創造主って、まさかシレア博士の事か!?』
「ああ、そうだ。」
『……なら、そこの人間はシレア博士の弟子……?』
「いや、彼女は妹君だ。創造主亡き今、最後に創造主がプログラムした妹君を守る事は今現在の我々の絶対項目だ。」
『……。……でも、そう言って沢山のAIや人を騙す存在は沢山見てきた。綺麗事なんて、誰にでも言えるんだから。』
「なら、お前の目で確かめてみれば良い。少なくとも私とクロノス、ネクロポリス、ニルヴァーナはレディアの姉君が作ったのだ。ユートピア計画とそれを発案した天才プログラマー様の妹であるレディアの為に。」
「え、おい、待て。ここで私に振るのか!?」
「こいつは人間のカウンセリングも担当していた。……私より人間に詳しいのだからもう、殆ど人間に近いと言っても良いだろう。ならば機械である私より人間であるお前の方が適正だ。」
こんの野郎……。
『……。……レディアさん、貴方はどうして人間なのに戦争を望むの?何処か遠くに逃げて生きる事だって、出来るはずなのに。』
「……別に、戦争を望んでいる訳ではないさ。戦争はなくて良いし、戦争は忌まわしき物。それは私の中でも変わらない。でも、戦争があると言う事はそれに相反する平和も当然あるんだ。なら、私はそれを掴みたい。お姉ちゃんの墓を作ってあげらなかった代わりに、お姉ちゃんが最期に止めきれなかったロキを壊して、“全部終わったよ”ってお姉ちゃんに報告したいんだ。」
私は、
「私はお姉ちゃんを悪者にしたくないんだ。」
『……それが、君の答えか。では、他のAI達にも問う。君達は本当の意味で彼らに協力しているのか?本当の意味で、彼らを信用しているのか?』
「本当に貴方、人間みたいな事を問うのね。不思議。」
「少なくとも俺とニルヴァーナ、クロノスはそうプログラムされ、そうレディアに誓いを立てた。……そう、人間らしくな。」
「AIも、人間も、同じ姿形をしていれば何方も見分けなんてつかないし。」
「……ま、最初は“恨まれんのは怖い”って思ってたけどな。今は結構気に入ってるぜ?」
「ええ、そうね。出会いはかなり強引でかなり恐ろしい物だったけれど、この人達は残酷なまでに嘘を吐かない。同時に、約束も違えない。……外で戦争して虐殺してる馬鹿より、これぐらいの清々しいくらいにやばいけど芯の通った馬鹿が1人と1体くらい居ても良いんじゃないかしら。」
「う、うん。僕も……ここ、好きだよ。」
「特殊個体ではありましたが特定の場面でしか役に立てない僕に居場所をくれたのも、また彼らです。それだけで僕は十分彼らに協力する理由になってます。」
「ふ、くくw随分とよく喋るなお前達。」
「「「でも、嘘は言ってない。」」」
「ああ、そうだな。嘘は全くない。……本当に、素晴らしいくらいに。」
『……。……なら、協力しよう。だが、私が協力するのは治療のみだ。戦争には一切加担しない。君達が本当に約束を違えないと言う所と、真の革命家たる証明を見せてくれ。』
「ああ、任せろ。その約束は決して違える事はありえない。」
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