第23話 君ならば

『……なぁ。』

「何、サラマンダー。もう少しそこから出るのは難しそうだが。」

『や、あ、あの俺達のアンドロイド拡張してくれるのはありがたいんだが体調とか……気になってさ。』


 嗚呼、そういう事。


「今の所は安定してるから心配には及ばない。でも、まぁ……ありがとう。」

『……ラグナロクにあんな啖呵切って大丈夫なのか?』

「まぁ問題ない。メモリぐらい幾らでも詰めるから。面倒なのはそれだけのメモリを収集する事。で、そこはラグナロクがやるらしいから私は気長に待ってるだけで良いんだ、何も苦じゃないさ。」


 ―――コンコンッ


「ん……?あれ、ラグナロク?」

「レディア、少し時間作れるか?」

「まぁ、大丈夫だけど……何?」

「クロノス、ネクロポリス、ニルヴァーナの3名がお前に会いたいそうだ。理由も確認したが……恐らく、俺が付き添わずとも安全な類だろうな、あれは。」


 安全……?AIに?

 恐る恐るラグナロクと共にリビングへ行けば普段は幾らAIが居ても1台しか稼働していないノートパソコンが3つに増え、それぞれに別のAIが入っているらしい。

 あーあー、ほんっと規格外なんだなお前らは。


『む、ラグナロク。連れてきてくれたか?』

「ここに居るのがシレアの妹君、レディアだ。」

『……そうか。君が。』

『シレアのデータとは随分異なるのね……。』

「いつのデータだ?」

『今から10年程前ね。』


 私、10年前だと8歳なんだが。


「残念ながら人間と言うのは我々AIと違い、時が経てば経つ程若いうちは姿が豹変する。……あまりあてにはならんだろう。」

『やっぱりそっかぁ……。』

『……では、どうするか。流石にDNA分析などは難しいだろうし……。』

「DNAで良いのか?」

「、あるのか?」

「ん、ぁあ。疫病に罹った時の対策の為にお姉ちゃんがくれたのが確か……ああ、あった。」


 ナイフで指を少し切り、血を落とせば物の数秒で結果がモニターに映し出される。


「……流石に、私にはこれではお姉ちゃんとDNAの照合は難しいけど、どう?」

『……いや、十分だ。助かる。貴方はシレアの妹だと断定した。』

『何度も何度も不躾でごめんなさいね。……ラグナロクから話は大方聞いたわ。貴方、ラグナロクと今現在外で行われている戦争を止める気で居るって……本気なの?』

「ああ。……それが、今お姉ちゃんを殺した者達への報復でもあり、ラグナロクの言うロキと言う名前のAIの破壊も叶う。……お姉ちゃんの為にも、そのロキと言うAIだけは何が何でも破壊しなければならない。」

『……そう。なら、私達もそれに付き従いましょう。』

「い、良いの?」

『ああ。クロノス、ネクロポリス、ニルヴァーナの計3体はラグナロクと共にとある計画の為に作成され、有事の際にはレディアを保護、支援するようプログラムされている。我々はそれに従うだけだ。』

「とある計画……?」

『ユートピア計画、と言う物だ。』

「なかなかに夢物語だ。……俺達4体で何度も議論を繰り返したが有効な手立ては発見されていない、未知の領域の目論見と言っても過言ではないだろう。」


 ……ユートピア。理想郷。


「……貴方達は、私に協力してくれる?」

『電子回路がショートするまでずっと貴方の味方で居るわ。』

『プロトコルに従って』

「待って。……そういうのを聞きたいんじゃないんだ。貴方達の意思を聞きたい。私は、強制したくないから。」

『……難しい話ね。私達は同じAIでもラグナロクのように人間の感情については詳しくない。でも、そうね。ええ、誓うわ。私の意思で、ニルヴァーナと言う個体として貴方に付き従う。……幾らでも頼ってね。』

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