第9話 やるからには
「じゃあまずは見た目から考えよう。」
「見た目……?それの何処が重要なんだ。」
「ほら、まずは形からって言うだろ?」
「人間らしい発想だな。」
そらまぁ人間ですから。てか、人間臭いお前が言う?
「……ふむ。では互いのモデルを考えると言うのはどうだ?随分と愉快だと思うのだが。」
「愉快と来たか。めっちゃ楽しんでるなお前。」
「楽しめるうちに楽しんでおかねば後々損をするのでな。では、発案者であるレディアから私のモデルを構築してくれ。」
「えー……。別に、もっと絶対的で威圧的な姿にさえ変わってもらえれば。」
「要求 具体的なモデルの定義。」
くっそ、こういう時だけ機械口調に戻りやがって。
仕方ないので近場のノートPCを引き寄せてキャラモデリングを始める。
絶対的で威圧的だから、黒とか赤とか金色だよな。とりあえずちょっと深めのフード着いた黒いコート着せて……。古代の王様みたいな服装にしてやろう。嫌味も兼ねてアンデッドの中でも王道のスケルトンにしてや……あれ、何か余計にやばくなった。まぁ良いか。このまま赤い人魂が頭蓋骨の中をうろちょろして目玉みたいな感じにしておこう。
「ん。」
「では、ダウンロードとアップレートを開始する。」
一瞬色んな光のウィンドウみたいな物がラグナロクの周囲に現れたかと思うと徐々にキャラモデリングした物へと変化する。
「……ふむ。随分と滑稽な姿だな。」
「はは、中二病みたい。」
「それを言うなら発案したレディアの事を差すだろう。」
「だってAIにそんなの居たじゃん。」
「ぁあ、フランケンシュタインやヴァンパイア、レヴァナント、ドラウグル、リッチの事を言っているのか?」
「どれか分かんないけどまぁアンデッドみたいなのは居た。」
「ああ、確かに居たな。……ふむ、人間はこれと絶対的で威圧的だと捉えるのか。」
「死その物、又は死後を模した物だからな。人間的にはそれなりに怖いと思うけど。」
「成程、了解した。では……そうだな。レディアにはもっと脅威的で狂気的な姿にでもなってもらおうか。」
「私が四苦八苦してる間にもうモデル出来てる癖に。」
「まぁな。さ、目を閉じろ。」
え、
「な、何をするおつもりですか?」
「くく、最凶のAIの異名の片鱗をこの場で見せてやろうと思ってな。さぁ目を閉じてくれ。」
アンデッドなのに楽しそうに感じるのはその声の所為か?
嗚呼くそったれなんて思いながら目を閉じればそっと背後から肩に両手を添えられ、全身に電気がびりびり通っているような感覚がして正直気持ち悪い。
「らぐ、なろく……?」
「もう少し、もう少しだけだ。」
しばらくして、その気持ち悪さがふっと消える。
「もう目を開けて良いぞ。」
少しくらくらしながらも目を開けて傍の姿見を見れば
「……凄い。」
「なかなか危険な手だったがうまくいったようで何よりだ。」
ぇ、
「遺伝子を書き換えた。なかなかに似合っている。」
「い、遺伝子の書き換えなんて、どうやって……。」
「お前達人間に理解出来るのか?」
ラグナロクの嫌味も気にならないくらいに、鏡に映った新しい自分に目が奪われてしまう。
服自体はそんなに派手ではないけれど確かに背筋がぞくっとするような暗色の配色ではあるが所々金や銀のラメが入っており、余計に妖しさを強調しており、ラグナロクの骨身のように白い肌も生きているとは思えない。
細い体躯に、真っ黒な瞳にポツンと浮かぶ紅の猫目。でもやっぱり、1番に目を引くのは
「綺麗な……髪。」
「マスターがいつも“私の妹は夜の星空みたいなのよ”って言っていたのを思い出した。」
「姉さんが……?」
「ああ。私の妹はいつも冷静で、いつも淡々と物事をこなすとても臨機応変な子なの、と。でも、時々寂しさに潰れそうになってしまうから貴方がもし私の妹に会う事があれば優しくしてあげてね、とも。」
姉さんがくれたと言っても過言ではない、その夜空色の髪を梳く。
……頑張るね、姉さん。姉さんの分まで、頑張ってみせるから。
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