第8話 ならこれは?

「お互いの案で、どれだったら可能だと思う?」

「含意が広過ぎて何とも言えんな。」

「じゃあ質問の仕方を変える。互いの案で実現可能なのは?」

「我々だけでは殆ど不可能だろう。方法としては悪くないとは思うが。そもそも、発電所と言うのはAI達の防衛の要。それなりに防衛に特化したAI達も居るだろうし、セキュリティも異常なくらいに堅い。それこそ、かなりの重装備か此方からは干渉出来るが彼方からは全く出来ないと言うご都合主義な制限でもなければかなり難しい。レディアの案である核ミサイルでの殲滅も悪くはないが良くもない。何より、核ミサイルがAI殲滅完了に至るまでに在庫が底を尽きる方が早いだろう。それに、核ミサイルを所有している各国がレディアを指名手配でもしてしまえば終わりだ。AI達は直ぐにお前を殺しに来るだろう、他の作業も人間もそっちのけで。人間からもAIからも追われる身となってしまえば幾ら私でもレディアを守り切る自信はない。ロキ自ら出てきてしまえば私はロキの相手で手いっぱいだからな。」


 流石AI。予測と計算が早い。


「じゃあ、実現可能に出来なくもないのは?」


 ぴしり、と固まったラグナロクは随分と嘲笑うように、見下すようにくつくつと笑う。


「レディア、それはかなり危険な思想だ。理解した上での発言か?それともただの死にたがりか?」


 な訳。


「勝てるゲームなんて、面白くないでしょう?」

「ふっ、はははwwゲーム、そうか、ゲームと来たか。」


 愉しそうだなぁおい。


「では、こういうのはどうだ?我々には仲間が必要だ。我々には力が必要だ。だが、ないのならば作れば良い。ないのならば集めれば良い。私が上手くリードして特殊個体AIを幾つか仲間に引き摺り込んでやろう。それらと協力してまずは使われては困る核ミサイルを完全ハッキングして某戦闘狂特殊個体AIに持たせる。」


 待て、全然名前伏せれてない、もう誰か分かったんだが!?


「次に、ここを破壊されるのは大変困るので某防御特化の城壁ならぬ鉄壁特殊個体AIに死守させる。」


 おい、そっちも分かったぞ。


「次に、常にネットワークに潜り続けている情報収集に特化した特殊個体AIに発電所の的確な位置を演算させ、特定させる。その後はもしもの為に破壊されてしまった各特殊個体AIのデータを保持、運搬させるのに適した箱舟の異名が就く特殊個体AIを勧誘。……まぁ、とりあえずはこんな感じだ。必要最低限の特殊個体AIを勧誘してロキ共々他のAI達と敵対する人間全てを叩き潰す。どうだ、面白そうだろう?」

「まず、特殊個体が特殊個体じゃなくなってるしぜんっぜん実現不可能だと思うんだが!?」

「焚きつけたのはお前だろう?人間。」


 すっ、と手を差しだされ


「震える程のスリルと呆れる程の暴挙の果てに終戦の光を見出そう。惚れ惚れする程の道化となり、指導者となり、新たな世界の幕を誰かの手ではなく、我々の手で開けてやろうではないか。」


 悔しいけどめっちゃかっこいいわ、それ。

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