第3話 思い出には触れるな

 夢を見た。

 小さな私がもう顔を覚えていない両親にアンドロイドを貰った日。そして、戦争が始まった日。

 幼い私はお姉ちゃんに手を引かれて旧市街地、戦場を駆け回って、結局は私を庇って姉も命を落とした。

 寂しくて、悲しくて、辛くて。

 姉を殺した奴を皆殺しにした。機械も、人も、無機物も、全て。

 アンドロイドや人間を始め、兵器や電子端末も、戦争を行使出来る全ての物に恨みを持って殺して壊して破壊しまくった。


「……。」

「おはよう、起きた?」

「……え、」


 目を覚ませば、私のお姉ちゃんが優しく微笑みながら此方を覗き込んでいて眩暈を覚えながら体を起こす。


「……いや、誰だお前。お姉ちゃんは、既に故人だ。」

「怒りの感情を感知。そうか、すまない。だがどうか話を聞いてほしい。言い訳にしかならないが私を食ったプログラマーのデータしかなくてな。これ以外に化けられないのだ。」

「……らぐ、なろく。」

「今度は困惑の感情を感知。ああ、私はラグナロクだ。……この姿はお前の何だ。」

「……私、の……姉だ。」

「そうか。では、電子に残った方が―――」


 いつもはしないはずなのに。

 お姉ちゃんの姿をしているラグナロクに背中から抱き着く。


「人間?」

「動くな。……動かないで、くれ。」

「この感情は……知らないな。何と言う。」

「……寂しさ。」

「成程、これが寂しいか。では、こうしよう。」


 やんわりと私の拘束を解いたラグナロクは私を抱き返してくる。


「え……。」

「人は、寂しいと温もりを求めるとマスターから聞いた。お前がマスターの妹と言うのなら私は全身全霊で貴公を守ろう。貴公を支援しよう。」

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