第11話 新たな手掛かり、日記

 机に手を伸ばせば蓮燔があっと声を挙げる。


「どうした?」

「そろそろ夕食の用意しねぇと。奏はもう少し探索してなよ。」

「……俺は、料理が下手なのか?」

「いや、味覚が弱いからあんまり作りたくないんだってさ。まぁ気にすんな。料理、好きなんだ。」


 そそくさと出ていく蓮燔を見送れば姿を隠していたレイがするりと甘えてくるので優しく頭を撫でてやる。


「どうした?」


 爪すらも綺麗な右前足でポフンと机の下にある三段の棚の1番下を開ける。

 中を覗けば真っ黒な錠前の付いた大きな箱があり、箱が大き過ぎてそれ以外何も入れられそうにない。

 この箱は……。

 手を伸ばし、触れればカチリと言う音がして勝手に鍵が開いてくれる。恐る恐る開けてみれば「他言無用、情報漏洩禁止」と血のように赤い字で書かれた術式が現れ、小さく声に出して読めば消え、中には真っ黒な本が幾つも綺麗に並べられている。よくよく見てみれば背表紙に日付が刻まれている。

 これは……?

 一番古い本を取り出し、開けば小さなICチップのような物が日付の掛かれた袋ごとに仕舞われている。どうやら外見は本だが中はカードを仕舞うようなファイルらしい。その中から1つ、ICチップを取り出して机上にあるこれまた真っ黒なPCの電源を点け、入れればその中には容量の小さいメモ帳のような物が入っている。

 もしかして……日記か?

 カチリとマウスを動かせば確かにそれは日記だった。


「〇月〇日 〇時〇分


 今日はF組の奴等蓮燔を虐めたらしい。あいつ等、本当に学習しない奴等だな。そろそろ吹き飛ばしてやろうか。

 そうそう、新しい魔法が出来たんだ―――」


 と、そこからも長々と魔法式らしき物や説明等々が載っている。

 ……これなら、俺にも読めるかも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る