第4話 難解な手掛かりは目の前に
「っぅ……。」
「あ、奏。落ち着いた?」
声の方へ視線を移すと傍で読書をしている蓮燔が目に入る。
眼鏡は既に持ち主の元へと返っていて、あの気味の悪い目玉野郎の姿はない。
「なん……と、か。」
「良かった……。あ、そうそう。実は学校側から無期限の休み貰ってるんだ。宿題と出席付きの。」
「無期限……?」
「お前が起きた時、どんな状態か分からなかったから……。とりあえずは落ち着くまで、安心出来るまではって。まぁ……その間は校内を歩き回れないけど💧」
「宿題……。」
「ああ、持ってきてる。俺の分は終わってるけど提出期限は明後日だから。お前のは無期限だけど💧やってみる?」
「ああ。」
自分の事も知りたいけど、まず第一に俺は学生なんだからそれについて学ばないと。
「俺は昼御飯の用意してくるから。宿題はこれとこれとこれ。後……あ、あったあった。教科書はこれ。一応教科書さえあれば出来る宿題だけど……もう1個は……。」
「この穴埋め式の宿題が3つ。そしてもう1個は?レポートか何かか?」
「正解。人狼についてのレポート、なんだけど……これは教科書に載ってないから街に行って本を買うか図書室に行くか……。……でも、まだ起きて間もないお前に街……。うーん……。」
「そこのパソコンのパスワードを炙り出せば良いんだろ?」
「簡単に言うなぁ💧」
……あれ、そういえば。
「……蓮燔。」
「ぅん?」
「……お前、杖は?俺の杖もないんだが……俺だけなのか?」
「……言いにくいんだけど、俺は持ってるけどお前は持ってない。」
……謎掛けか何かか?
「お前、無詠唱で魔法使うんだよ。そんで以って、杖なんて魔法媒体を使わずに、言霊って言う、言葉に魔力を乗せて。オリジナル魔法なんて100を余裕で越えてるし、それぞれ魔法式が6000以上。……教えてはもらってけど全く憶えてねぇよ。」
「……無詠唱。言霊。」
「しかも、それは上位悪魔と魔王しか出来ないって言われてた技術なんだ。」
「悪魔ってあの代償と引き換えに願いを叶えるって言う?」
「ああ。代償と引き換えに願いを叶える際、一言発言するか指を鳴らすだけで瞬時に願いを叶えられる。」
「便利だな。」
「便利だけど、人間には到底出来ない技術なんだ。それをお前は可能にした。そして、教えてもらってる俺でさえ分からなかった。……だから、よく疎まれてたし、変なちょっかいも掛けられてたよ、お前は。でもお前はそれ等全てを無視してて、ちゃんと見ないと分からないくらいに綺麗に全部避けて。……そして、あいつ等が俺に手を出した瞬間。俺に手を出してきた100人以上居た奴等を一撃で城内、校舎の周りにある堀に吹き飛ばして、矢の雨を降らした事がある。」
何て奴だ。報復が怖い過ぎる。
「……“俺に手を出すのは別に構わん。お前等如きのちんけで幼稚な魔法が俺に届きはしない。……だが、俺の大事な物に手を出すって言うならお前等は俺にとってただの敵。敵は排除するに限る。ほら、死にたきゃ魔法撃ってこいよ。灰も残さずに燃やし尽くしてやる。”」
「危ない奴だな。かなり。」
「まあ、俺はその危なさに助けられたけどな。……じゃ、キッチン行ってくる。」
少し恥ずかしそうにしながらキッチンへ消えていく。
……そうか。俺はそういう考え方をする人物なのか。なら。
「……俺は、家族でも失ったのだろうか。」
そういう反応をする奴は大抵、心に傷を持っている奴だ。だからこそ、そういう大切な物を傷付けられる行為に過剰に反応し、2度としないように、でも怒りを抑えらなくて死ぬとかこの場合なら学校だから退学ギリギリラインまで報復をする。
「……1226。」
やっぱり、この日に関係があるんだろうな。恐らくこれは日付だ。この日に何処かで、何かが起きた。
そして、蓮燔はそれを知っている。
「……もっと、調べないと。」
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