第3話 突然の事には対処出来ない
それからは1226について何度聞いても蓮燔は口を割らず、のらりくらりと躱されてしまった。
それは善意からなのか、恐れからなのか。
もうその事については諦め、蓮燔が忘れた頃に突撃する事にした。
「……他にも、気になった事があるんだが。」
「学校の事?それとも私生活とかか?」
それも気にはなるんだが。
「……俺って人間なのか?」
「えっ。」
俺に追加の紅茶を淹れてくれている蓮燔の肩がビクリと揺れる。
「と、突然何言いだすんだよ💦お前も俺も人間だよ!そら……ちょっとは他種族の血も混ざってるけどかなり薄いから俺でも忘れるくらいだけど……。……何かあったのか?ここから医務室までのこの短距離で。」
「……変な物が、見えるんだ。」
「変な物?」
「……顔がない黒い人影だったり、普通の鏡から手だけ伸びていたり、壁に口が生えてたり、見た事のない変な形のした小動物が人の肩に乗ってたり。……でも、お前には見えるような素振りがなくて。……俺がおかしいのか?記憶を失った時……って言うか、失う瞬間?俺が最後に自分の記憶を保持してる最後の一瞬で……何かあったのか?それとも、霊感でもあるのか俺は。」
「……霊感。お前はかなり霊感が強いんだ。よく追い回されてる。俺はお前程見えなくて。あ、でも自分で見えるように道具を作ったんだ!」
蓮燔は眼鏡を外し、それを渡してくる。
これが……?
試しに掛けてみると天井からぶら下がっていたのか大きな影のような物が目の前に居て、ニヤリと口があれば裂けるくらいに笑ってきたので椅子から転げ落ちる。
「か、奏!?」
「な……なる、ほど。これは……す、凄い。」
まだ眼鏡を掛けているからか、掛ける前よりもよく見える。それとも、自覚したからなのか。
何方かは分からないけど動物型の霊がジリジリと此方に近寄ってくる。
蓮燔はやはり見えていないらしい。それを擦り抜けて俺の肩を掴み、声を掛けてくる。
「奏!?大丈夫か!?」
その蓮燔の肩越しに俺を驚かした奴が居て、更に目が大きくなりながらもニヤリと笑い続けている。
少しずつ体ごと背後から沼の中にでも、大きな穴の中にでも落とされるような気持ちの悪い浮遊感がしてふいに蓮燔に手を伸ばしたが呆気なく意識を手放した。
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