第4話 あれを守る為に
……ウトウトする。
寝惚けながらも整理を終え、ベッドにもたれる。
このまま……眠って―――
「クルゥ!」
「何……?」
ルディオは俺の膝の上で丸くなり、体温がじんわりと流れ込んでくる為、抵抗せずに目を閉じた。
「―――。……。おーい。」
「……?」
「何か、湖の近くで野営してる奴が居るんだが……。あれ、吹っ飛ばすか?」
グロウディが覗き込んでいた外の様子が見れる魔力だけで構成された鏡、
「……ユルア。」
「うん?知り合いか?」
「……音、拾ってくれ。」
今更何しに来やがった。もう……放っておいてくれよ。
『それで、何か進展は?』
『全く。』
『流石は族長の娘。目立ち過ぎない程度にしか動いてないみたいで、情報もかなり少ない。……ない訳じゃないのが救いだけど。』
『なあ、本当にそんな奴連れ戻す必要があるのか?』
『当たり前じゃない。当主を殺したのよ?私達の部族では最も力がある者が長にならないといけないって昔から決まってる。強さを証明したのだからその責務を果たしてもらわないと。』
『俺はそんな奴に従いたくないけどな。……もしかして、理由ってそれだけじゃないのか?』
『あの子はただの九尾の癖に1人で命喰と渡り合える実力を持ってるのよ?噂では、横の繋がりも……。あの子は私達ホワイトノイズが存続する上で必要な道具なの。みすみす逃がして―――』
「失せろ。」
パチン。
指を弾くとその集団が居た所はクレーターのように凹んでからそこに座っていた4人の九尾を弾き飛ばし、元の平地へと戻る。
……ああ、少しだけすっきりした。
「ふぃ、フィウルーティ……?」
「……何でもない。……九尾が来たら殺す勢いで吹き飛ばして良い。……それと、グロウディ。」
「何だ?」
「……お前、しばらくここに居ろ。外出するな。」
「え、食材調達は……?」
「魚で我慢しろ。それか、魔法を使って構わんし、裏庭はただの荒れ地。別にあそこで野菜でも何でも育てて良い。……だから、外出するな。地下室に種やら時間を止めたままの食糧やら何やらがあったはずだ。あれだけで数十年は保つ。」
「一体どれだけ貯め込んでんだよ……。……?でも、何で急に……。あいつ等が悪いのか?何なら、俺が吹き飛ばしてきてやろうか?……あんたのその顔、嫌いだ。我慢する為に無理矢理感情を殺しているような、そんな顔。」
グロウディが優しく頭を撫でてくる。
「……あいつみたいだな、お前は。」
「あいつ……?」
「……うるさい。」
「ギヤッ!?」
「急に変な事を言うな、気色が悪い。」
「酷くねぇか!?折角心配してやったのに!」
「……ああ、そうだ。」
俺は立ち上がり、扉のドアノブを握りながら振り返らずに言う。
「俺の自慢の宝、大魔導図書館の地下には行くな。」
「地下……?」
「……あそこには、お前でも立ち入りを許さん。何があっても、俺が死んでも入るな。」
「え、あ、お、おう……?」
「……ではな。俺は今から本に埋もれてくる。そこの袋にお前の分け前が入ってる。」
グロウディの答えを聞かずに部屋から飛び出し、大魔導図書館の地下室に繋がる扉の南京錠を外し、中に入ってからもう1度魔法で南京錠を付け、足早に螺旋階段を降りていく。
……随分と待たせてしまった。グロウディが居ないとこの城の防衛に徹してるから、しばらく会えなかった。……ったく。あいつに適当に理由を付けて定期的に帰らせようか。……いや、ルディオはドラゴン、思ったより早く成長するかもしれん。……そしたら、城の守りを任せて俺が出る必要のない時は任せてしまおうか。
そうこう考えていると群青色の髪と毛並みの耳と9つの尾を持つ●●がこっちに気付いてニッコリと笑う。
「久し振り。やっと貴方のお友達が来たみたいね。」
「……ああ。やっと休める。また……色々教えてくれないか、ルフェイア。」
「ええ、勿論。その代わり、またお願いね?」
「ああ、情報はちゃんと用意した。……血は、どれくらい欲しい?」
「んー……気まぐれ、かな♪」
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