第3話 時間を経て

 ―――我が家にて―――



「フィウルーティ、昼は何が良い?」

「勝手にやってくれ。俺は魔道具と宝物の選別だ。……魔道具は山分けだからな。」

「ああ!俺でも分かりそうな奴をマジックバックに放り込んどいてくれ!後で解体して勉強したいからな!」

「宝物は?」

「んー……時々旅するから6割で良いよ。」

「意外と遠慮しないんだな。」

「ちゃんとお前と俺の食材分も入ってるんだよ。大体、本を買う以外に金使わないし、俺の何十倍も資産持ってるんだから良いだろー。」

「正確には658倍近い。」

「ぐっ……。金持ちが……。」


 厨房で嬉々として料理をするグロウディを放ったらかし、自室で先程回収した宝物の1部を取り出して選別を始める。

 流石はドラゴンの宝。保存状態も良ければ劣化も少ない。

 ……これは期待出来そうだな。




「フィウルーティ?」

「何だ、グロウディ。」

「飯、出来たけどどうする?」

「……食べようか。」

「持ってきたからそっちのテーブル使うな。」

「ああ。」


 グロウディが準備している間にある程度片付けて席に座る。


「「頂きます。」」




「……ご馳走様でした。」

「お粗末様でした。で、どうだ?」

「まだ途中だから何とも言えんが質はかなり良い。流石はドラゴンだとしか言えんな。」

「おおー!楽しみだな♪」

「……それと、1つ。気になる物があったな。」

「お、何々?」


 俺は異次元から例の物を取り出し、片付けられたテーブルの上に置く。


「……卵?」

「恐らくドラゴンのだろう。」

「……え。えええ!!?ほ、本物なのか!?」

「ああ。どうやら魔術で時間が止められている。魔術を解けば直ぐに孵るだろうな。」

「しゅ、種類は?何ドラゴンなんだ?」

「そうだな……。この模様と時間を止めていても分かるこの熱量からして煉獄の申し子、アルファノイドドラゴンか生きる炎と名高いヘルファイアデッドドラゴンか。そのどちらかの可能性が高いがあれだけ放置されていたんだ、しかもずっと魔術の影響下にあったのだから新種のドラゴン、又はやたらと魔法耐性を持つドラゴンの可能性が高いな。」

「孵そうぜ!そんで、飼おう!ドラゴンを飼ってるなんて話、聞いた事ないからな!」

「何だ、食わないのか?」

「流石に子供を喰うのは良心が……。」

「お前に両親が居たか?」

「漢字が違うよな、多分。」

「散々聖騎士を殺しといて言えた口ではないな。」

「うっ。それには反論出来ない……。」


 落ち込むグロウディを放置して卵の時を止めている魔術を解くと予想通り卵が割れ、黒光りし、ルビーの如く紅色の瞳を持ち、世にも珍しい8枚の翼を持つ黒い小竜が現れる。


「クルゥウ!」

「……。」

「おお!綺麗だな、こいつ!でも、8枚の翼のドラゴンなんて見た事ないんだけど……。」

「……アルファノイドドラゴンの亜種だな。ちなみに、翼が8枚あると言う事はそれ相応の魔力を有している事の証明だ。俺も初めてこんなに近くでドラゴンを見たが、子供だと可愛い物だな。」


 小竜は此方をじっと見ていて、そっと手を差し出すと猫のようにスンスンと匂いを嗅ぎ、満足したのか俺の膝の上で丸くなり、頭を撫でると「クルル」と満足そうな声を上げる。


「懐いてるな。」

「……そうだな。贄を捧げんと使えないような三流魔術を研究している奴にとってこいつはかなり良い媒体だろうな。」

「あ、飼うなら名前付けようぜ、名前!」

「……名前。」

「グリュ?」

「……ルディオ。昔の言葉で、黒曜石と言う意味だ。」

「良かったな、ルディオ!名前付けてもらえたな!」

「クリュリュ!」


 ルディオがグロウディとじゃれ始めた為、そっと抜けだして戦利品の選別を再開した。

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